核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

小林秀雄

原子爆弾を「神を恐れぬこと」と感じた(?)小林秀雄

今回は初出『新潮』から引用しますが、この箇所に限っては全集等との異同はありません。 ※ 小林 私ちょうど原子爆弾が落つこつたとき、島木君がわるくて、臨終の席でその話を聞いたとき、ぼくは非常なショックを受けた。人間も遂に神を恐れぬことをやり出し…

一九四八年の湯川秀樹にエーテルとか言い出す小林秀雄

あの北原白秋も反戦詩を書いていたことだし、人への批判というものは慎重にやらなければいけないことはわかっています。しかし、小林湯川対談(一九四八)の、 ※ 小林 デカルトの持っていた延長という考え・・・・・・物質即ち延長という考え、ああいう着想もだん…

『高見順日記』を読んでみる

特に終戦直前、直後のあたりを。小林秀雄も出てきます。

小林・湯川対談への同時代の酷評

これもデジコレで発見したもので、酷評があったから即対談の価値が下がるというものではないのですが。 ※ 編集者 すこし前に、湯川秀樹博士と小林秀雄氏が「人間の進歩について」という対談をおこないましたが、それが広汎な知識人たちの間に相当な反響をひ…

渡辺慧が『サンス』に載せた論文が見つかった!

国会図書館になく、『日本の古本屋』で検索しても高価な雑誌『サンス』。 これが入手できないために論文執筆をあきらめかけていたのですが、渡辺の単著『時間』の中に、『サンス』一九四七年十二月初出の論文、「Ⅸ ベルクソンの創造的進化と時間」が収録され…

戦時下に湯川秀樹が書いた文章を読んでみた

例のごとくデジコレで検索すると、太平洋戦争下の、『軍事と技術』とか、『言論報国』とかいう物騒な雑誌にも、湯川秀樹は科学解説記事を載せています。 湯川の名誉のために急いでつけくわえますが、彼の言動は反戦的では決してないかわりに、小林秀雄らのよ…

仮に、初出との異同が一切なかったとしても

小林秀雄の書いたものが無価値であることに変わりはありません。 「様々なる意匠」も、「私小説論」も、「無常という事」も後出しの改竄だらけなのですが(そして、すべての戦後の小林秀雄全集はそれを隠蔽しているのですが)、そうした異同がなかったとして…

推理小説のトリックを「サギ」呼ばわりする小林秀雄

注 意 ! ネ タ バ レ を 含 み ま す ! さて、ウィキペディアの、ある推理小説の項より引用。 ※ 日本ではアンフェアだという声はかなり高かったらしい[10]。雑誌『宝石』誌上の江戸川乱歩と小林秀雄との1957年の対談[11]において、小林は次のように批判し…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021) その4

従来の小林秀雄本は、「小林は戦争に協力しなかったから偉い」という論調がほとんどです(そして、それは菅原(2020)によって否定されました)。 が、中野著の独自性は、「小林は戦争に協力したから偉い」という主張にあるようです。嫌な時代になったも…

ハイデッガーのいう「自由」

図書館に行けない日なので、ウィキペディアからの引用でお送りします。 ドイツの大哲学者とされるハイデッガーが、「自由」という語をどう使っていたか。 ※ 1933年11月、(略)フライブルク大学総長ハイデッガーは「ドイツの学者の政治集会」に参加し、「ドイ…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021) その3

「昭和十八年の「実朝」から終戦までの期間、小林は沈黙したと言われている」(一二頁)とありますが嘘です。 「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その5 小林秀雄 - 核兵器および通常兵器の…

ねずみのひまご

ちょっと中野論への書評を中断して、頭を冷やすことにします。 私は新興宗教と詐欺が大嫌いなのですが、新興宗教の末端信者、詐欺たとえばねずみ講の末端会員には同情します。自らの判断が招いたにせよ、彼らは被害者なのです。だからってツボ買おうとかいう…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021) その2

ページ順に間違い探しをやるときりがないので、最重要なとこからいきます。 ※ 少なくとも私が読んだ限りでは、小林が日本の勝利を信じて疑わなかったことを示す記述は見当たらなかった。 (中野剛志『小林秀雄の政治学』 九九頁) ※ ……いくつもありますが、…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021)  その1

愚著。1001円をドブに捨てました。 いくつかの類著と同じように、戦後に出た、改竄と隠蔽だらけの小林秀雄全集(新潮社 1967~168年)をもとに、戦中の小林秀雄を論ずる本です。 ゆえに全頁つっこみどころだらけなのですが、腹立たしいので何回か…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021 入手予定)

おととい出たばかりの本。 ※ 「政治嫌いの文学者」というイメージが強い小林秀雄。だが著作を丹念に読むと、政治、戦争への深い関心と洞察が。新しい小林像。 ※ ……やばい、先越されたかも。 ただ、「深い関心」はともかく、「洞察」は同意できません。 ヒッ…

「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その7 福田恒存

「述べさして戴きたいと思つたことを小林さんが御話になつて、小林さんの御考に依ると」と、小林秀雄への追従に前半の発言は割かれます。 そして後半は、「私最近満洲、支那の方を廻つて参つたのですが、その中でも一番感激したのは旅順」と、乃木将軍の名を…

「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その6 今和次郎

「考現学」の提唱者としておなじみの、今和次郎。 彼は「随筆」「雑文家」の立場から、「皆が決戦生活、或は生産増強に忠実であるべく」皆のはげましになりたいとの趣旨から、単調無味な国策の宣伝に不満を述べています。 当局の統制に異議を唱えているよう…

「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その5 小林秀雄

いつものように全集未収録。この席には小林秀雄全集編纂者の一人である中村光夫もいるので、知らなかったということはありません。 ※ 小林秀雄氏 (略)例へば兵隊さんや、海の荒鷲でも非常な専門家で、航空母艦に乗って居る人に聴きましたが、皆技術の達者…

「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その4 三枝博音

ウィキペディアでは、「1928年、無神論運動を起こす。1931年半年間ドイツに留学、世界観の変革に多大な影響を受けた。1932年に戸坂潤らとともに唯物論研究会の創立に参加。機関誌『唯物論研究』の初代の編集部長となる。1933年思想弾圧により1ヶ月間拘禁の難…

「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その3 中島健蔵

「1946年、日本著作家組合創設。書記長となった。同年、野上彰の「火の会」に参加する。第二次世界大戦に協力した文化人の指弾にあたった」(ウィキペディア「中島健蔵」の項より)という人物。同記事には次のような記載もあります。 ※ 戦時中、作家の中河与…

「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その2 出席者一覧

「日本文化の知的参謀本部」を自負する、日本文学報国会評論随筆部門の出席者。 旧字体は新字体に。 ※ (出席者) 高島米峰、柳原緑風、池島重信、原奎一郎、唐木順三、木村荘吾、武田忠哉、伊福部隆彦、川合仁、小田切秀雄、齋藤正直、青野季吉、尾澤良三、…

「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その1

まず訂正。同記事を何度も「座談会」と書いてしまいましたが、実物を見たら違いました。日本文学報国会評論随筆部会での自由発言でした。つまり中島健蔵、三枝博音、小林秀雄、今和次郎、福田恒存の五名は強制ではなく、自らの意志で個々の発言をなしたとい…

哲学者、三枝博音

三枝博音(さいぐさ ひろと)。一九四三年の座談会のメンバーのうち、この名前にはうかつにも知りませんでした。 (2021・2・19追記 座談会ではありませんでした。訂正してお詫びします) ウィキペディアより。 ※ 三枝 博音(さいぐさ ひろと、1892年…

もう言及されてるかも

今回は請求しなかった(できなかった)のですが、 「日本学芸新聞」をよむ--1942年から43年まで 久保田 正文 文学 29(8), ????, 1961-08 という論文が既にありました。例の座談会についても何かが述べられているかも知れません。また必読文献が増えてしまい…

批評欲求と戦争欲求

(2021・2・19追記 座談会ではありませんでした。訂正してお詫びします) 今回、中島健蔵、三枝博音、小林秀雄、今和次郎、福田恒存の戦時下の座談会を、複写請求したのは、今さら小林秀雄や福田恒存の時局便乗をあげつらうためではありません。彼ら…

小林秀雄らの1943年の座談会をはじめ

(2021・2・19追記 座談会ではありませんでした。訂正してお詫びします) どうしても欲しい資料数点のコピーを、国会図書館に注文しました。 もっと早くやっておけば、論文一本ぐらいは書けたものを。 数日中に速報を寄せる予定です。

小林秀雄語録―なぜ戦争は起きたのか

終戦記念日からは一日ずれてしまいましたが。 戦争の被害を語り継ぐだけでは、戦争を止めることはできない、というのが私の信念です。戦争の加害者、戦争で得をした人を徹底的に調べ上げなければ。 その一端として、小林秀雄という批評家の戦前・戦中語録を…

適菜収『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?』講談社+α新書 2018

小林秀雄全集を引いて、「小林秀雄はヒットラアの邪悪さを見抜いていた」(一四二ページ前後。コピーはとらなかったので大意)と論じる、無価値な本です。 当ブログが何度も述べて来たように、小林の一九四〇年の『我が闘争』書評では、ヒットラーを無条件に…

その人生は嘘だらけ

最寄りの図書館で新潮社の第五次小林秀雄全集の「杭州」「杭州より南京」「蘇州」および別巻2、補巻1を参照しましたが、捕虜殺害の話や従軍慰安婦を買った話は跡形もありませんでした。予期していたことではありますが。

小林秀雄が見た南京の死体

日本軍の南京占領が一九三七(昭和一二)年一二月。その翌春の出来事です。 ※ 塚は三間置きくらゐに掘られ、そこらには、帽子や皮帯や、鳥籠の焼け残りなぞが散らばつてゐる。埋め残した支那兵の骨が、棒切れがさゝつた様に立つてゐる。すべ〱した茶色で、美…