同書の26~27ページに、村井弦斎の小説「匿名投書」のあらすじが紹介されています。
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たとえば明治二十三年発表の村井弦斎という流行作家の「匿名投書」という作品がある。
ある日本人の匿名の新聞への投書に、ロシアのアジア侵略の野望を口汚く攻撃する文章があった。これがロシアの新聞に転載されて、ロシア政府は怒り心頭で宣戦を布告してくる。攻め込んだロシア軍は九州、四国を占領し、そこから大部隊をくりだして静岡県に上陸し東京攻撃にとりかかる。さながら幕末の西軍が江戸に迫りくるがごとくに。と、ある科学者がすばらしい反撃プランを考案し実行する。敵の大軍が箱根の天下の険にさしかかったとき、山を木ッ端微塵に爆発させてこれを全滅させる。これで目出度し目出度し。
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