核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ザミャーチン『われら』(川端香男里訳 講談社 1970 原著1924)

 ああ、あのマスクして上半分だけメイクする人。それざわちん。ザミャーチン(1884~1937)の『われら』は、レーニン政権下ソ連の独裁体制を風刺したSFです。
 ゴドワロワ氏の論文に、『三十年後』との比較でこの作品がとりあげられていたので、つい手を出してみました。 
 …総人口の八割を死に至らしめた「二〇〇年戦争」の終結後、人類は悲劇の再発を防ぐべく「単一国」を創設し、緑の壁の中に徹底した管理社会を築きあげました。
 そんな社会に何の疑問も抱いていなかった、宇宙船開発技師の主人公、D‐五〇三号。
 あるきっかけで彼は、緑の壁の外側で活動する反「単一国」組織と接触してしまい、自らの社会のあり方に疑問を抱き始めます…。
 単一国の独裁者が「恩人」と呼ばれているなど、表面的(上半分?)には『三十年後』との類似点も見受けられるのですが、小説としてのまとまりがよくないように思えました(主人公、結局何一つ自分で決断しないし)。レーニン政権下でこれだけ独裁体制を批判できた、という歴史的意義は認めます。独裁体制のもとでの「平和」を批判している点も。