核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

エドワード・ベラミー著  平井廣五郎訳『百年後の社会』(1903)

 日露戦争の一年前に翻訳された、社会主義ユートピア小説"Looking Backward"です。
 当時は割とあることですが、主人公ジュリアン・ウェストが「西重連」さんになるなど、人物名を強引に変えてます。でも地名はボストンのまま。
 西暦1887年から2000年にやってきた主人公の眼を通して、「戦争なんかは決して致しませぬし、政府も戦争をする権がありませぬ」という理想社会を描いています。
 モリスの『ユートピアだより』などの類書にも言えることですが、こういういいことずくめの未来小説というのは、読んでて非常に退屈なわけです。こういう親切で働き者な人たちばっかなら、そりゃ戦争なんてほっといてもなくなるでしょうに。
 なおカール・ポパーは若年時にこの本を愛読していたのですが、長じて後にユートピア社会工学(現実をいきなり理想に変えようとする方針)を批判、ピースミール社会工学(現実を少しずつ変えていく方針)を提唱するに至りました。歴史的な価値はある作品だったのでしょう。