核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

黒田翔大「文学における電話前史:遅塚麗水『電話機』に描かれた電話」

 12月16日は電話の日、ということで、黒田翔大氏の論文「文学における電話前史:遅塚麗水『電話機』に描かれた電話」(『阪神近代文学研究 』(17), 1-14, 2016-05)を紹介します。
 1890年の12月16日に日本の電話事業は開始したわけですが、それに先駆けて電話機の普及した近未来社会を予測したのが遅塚麗水の小説「電話機」。複雑な網状構造を持つこの作品を、同論文は8つの部分にわけて明快に分析しています。フランスでは電話がラジオ的な使用法(ニュース、音楽番組など)をされていたなど、同時代の電話に関する情報も豊富で、実証的で堅実な論文です。この作品は以前に私も取り扱ったことがありますが(『日本文学』2006年6月号)、黒田論のおかげで誤読していた箇所に気づかされました。
 黒田氏は学会発表で、星新一の『声の網』を扱ったそうですので、そちらの論文化にも期待です。そういえば、あれも死者からの電話で始まる電話社会を扱った作品だったような……。

(2017・7・26追記 死者からの電話で始まるのは、『声の網』の第五話「亡霊」でした)