核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

チキンホーク列伝2 夏目漱石

 自らは徴兵を逃れていながら、他者に対して「戦争に行け」と命ずる者たち、それがチキンホークの定義です。博士論文第八章より再掲。

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 太陽にある大塚夫人の戦争の新体詩を見よ、無学の老卒が一杯機嫌で作れる阿呆陀羅経の如し女のくせによせばいゝのに、それを思ふと僕の従軍行抔はうまいものだ
野村伝四宛書簡 一九〇四年六月三日 岩波書店漱石全集』 第二十七巻より

 先生から徴兵避忌は国民の恥辱である、此国民の義務たる義務を遂行しなくては忠良の日本国民ではないと云う様な意味の話を聞かされた時、長男がスツト立上つて「ダツテ先生、私のお父さんは北海道へ行つて徴兵をのがれたのですがお父さんは日本国民ではないのでしやうか」と先生に質問を浴びせた。(略)父が北海道に転籍して徴兵避忌をしたなぞ誰が教へたものだか実際驚か(さ)れる。
「夏目博士座談」 『高田日報』一九一一年六月二〇日   岩波書店漱石全集』 第二十五巻 四一〇ページより
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 「従軍行」がどういう意味で「うまいもの」かは、「夏目博士座談」の巻数ともども、後日引用させていただきます。
 (2018・11・12追記 「従軍行」を全文引用しました)
 (2018・11・24追記 「夏目博士座談」の巻数とページ数を追加しました)
 長男夏目純一はこの時学校へ行く年齢ではないので、「長女」の誤りかとも思われますが、本筋に影響はありません。「夏目博士」でもないし。いずれ「高田日報」も確認する必要がありそうです。
 私は卒業論文修士論文、博士課程入試論文の第3章と漱石作品で書いた人間であり、小説家としての漱石には今でも敬意を払っています。しかし、漱石が平和主義者であるとか、大日本帝国への批判者であるとかいった論には賛成できません。もちろん逆に「忠良の日本国民」だとも思いません。