核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ハイネを騙る柳田国男

 林正子「柳田國男のハイネ受容による<民族>の発見 : <民族精神>の 高揚と<民俗学>隆盛の連環を考究するために」 [岐阜大学国語国文学] no.[36]  p.[19]-[35] Issue Date 2010-02。
 ハイネの『流刑の神々』を柳田が紹介した「幽冥談」についての論文。
 
    ※
 ただし、「幽冥談」 で紹介されている『流刑の神々』の内容は、
必ずしもハイネの原典に対応していない。たとえば、ジュビター
は北極圏にあるうさぎ島という小島に住むのであるが、柳田の談
話では、北国の山中に逃げ込むことになっている。また、ジュビ
ターと逢うのは捕鯨船の船員であるが、柳田談話では漁師とされ、
仕えている鷲と山羊も、談話では狼となり、マルスは傭兵である
のに、談話ではメルクリユウスと混同され、死霊の送り人となっ
ている。さらに、『流刑の神々』 にはヴィナスは登場しないが、
談話では、洞穴に住んでクリスチャンを騙す魔女が扱屈する。
このような設定のズレないしは改変は、柳田が『流刑の神々』
を読んだのが談話筆記よりもかなり以前であったことを推測させ
る。あるいは、ハイネ作品を祖述することに、必ずしも柳田の意
図があったわけではないということになるのではないだろうか。
 (三二ページ)
   ※
 
 ……「対応していない」のではなくて、「何一つ合っていない」というレベルです。
 息をするように嘘をつく、柳田国男の虚言症ぶりを示す好例です。