日本で初めて「平和主義」という言葉を使った矢野龍渓。
彼は、どのように戦争を止めるかと考えていたのか。
空想的社会主義小説『新社会』より引用します。
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戦争は人間の惨事なりとの理屈のみにて之を止めよと説くも、実際適切に平和を得べきの手掛りありとも見えず(傍点省略 二六四~二六五ページ)
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戦争は悲惨だと言うだけでは戦争は止められないという認識。さらに龍渓は列国勢力平均や列国平和仲裁裁判にも言及しますが懐疑的です。それでは。
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労力の限度、万国連約の一時のみ実際に於て適実堅固なる世界大平和の連鎖と称すべし(略)社会主義は実に世界大平和の好機なるかな(二六五~二六六ページ)
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世界の労働者が国境を超えた同盟を結べば戦争を止められるという主張で、結局社会主義の宣伝か、という気はしなくもありません。「どのように戦争を止めるか」についての数少ない正面からの答えですが、是認するわけにはいきません。