核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

グラムシ「日本文化についての覚え書」(『グラムシ選集 第4巻』合同出版社 一九六三)

 まずはとっつきやすいところから入ります。グラムシは同時代(一九二九(昭和四)年)の日本をどう見ていたか。

 「シントウ」の語が出て来るのはいいのですが、「ブツドー」(仏道)なんて、あまりネイティブ日本人は使わない日本語も出てきますし(まさかブシドーと混同したのではあるまいな)、「天と地の神イザナギイザナミ」(二三〇ページ)なんてのも怪しいところですが、グラムシの分析が光るところもあります。

 

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 日本人のような近代的文明人が、こうした神(引用者注 アマテラス等)を信じあがめているということも興味深い。(しかしながらおそらくは、事態はみかけほど単純ではないであろう)。

 二三〇ページ

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 ……ほんとに単純ではなくて、政府要人をはじめ日本人のほとんどはアマテラスが太陽神だなんて信じてません。「かのように」の論理というやつでして。

 普通選挙後の日本の将来については、グラムシはえらく楽観的です。

 

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 権力と主権とが天皇その人にあるのではなく、国民にあるのだという確信が、真の知的・道徳的改革にみちびくのである。(略)そしてそのような改革が、日本の国民をその近代的経済構造の水準にまで押し上げ、貴族や封建的官僚制の政治的・観念的な影響から人民を脱けださせることができるのである。

 二三三ページ

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 ……残念なことに、日本人は自らの手で天皇制からの知的・道徳的改革をなしとげることはできませんでした。これもマルクス主義者のはずれた予言といえばそれまでですが、日本人の一人としては考えさせられるところもあります。矢野龍渓福地桜痴や木下尚江のプロジェクトはなぜ未完に終わったのかと。