マルクスがらみの文献を読んでいると、どうしてもアミバを連想してしまいます。
『北斗の拳』や『ファンロード』をご存じでない方のために簡単に説明します。
『北斗の拳』は核戦争後の荒廃した時代が舞台なのですが、そんな時代にも北斗神拳を医学に応用して人を救う、トキという聖人がいます。アミバはそんなトキがねたましく、自分もかじった拳法で人の病気を治そうとして逆にひどい目に合わせます。
「ん~。間違ったかな」
怒ったトキにつきとばされ、アミバはトキを逆恨みします。そしてアミバは核戦争後の混乱をいいことに自分がトキになりすまし、人体実験などやりたい放題のあげく、訪ねてきたトキの義弟のケンシロウ(主人公)をだまします。
「ケンシロウ~。暴力はいいぞ~」
しかし化けの皮がはがれ、激怒したケンシロウに秘孔(急所)を突かれ、「うわらば」とか叫んで死んでいきます。
暴力への礼賛と、本物の天才へのねたみと、自分こそ真の天才と信じて疑わないずうずうしさ。そういう人物なのですが、「間違ったかな」の一言にだけは、かすかな人間味を感じます。昔の『ファンロード』誌読者欄などで愛された所以でしょう。
アミバと同じ思想の系譜であるヘーゲル、マルクス、エンゲルス、レーニン(以下省略)といった人々の著書には、ついに「間違ったかな」の一言も見出せませんでした。