核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『水滸後伝』

 すいここうでん。前に扱ったような気がしてたのですが、ブログ内検索しても出てこなかったので書くことにします。

 名作『水滸伝』の続編。108星の化身たちは、百二十回本(一番長いバージョン)で地方反乱軍との戦いに回され、その3分の2ぐらいが戦死、残りも暗殺されたり病死したり円寂してしまうわけですが、「混江竜」李俊だけはシャム国の王になるという伏線が残されてまして。それを作品化した続編が『水滸後伝』です。

 さすがに李俊と童威・童猛だけでは物語が持たないと思ったのか、原作の最後で死亡と書かれたはずの仲間たちも次々に合流します。「片手では鳴らぬ」とのことわざ通り、兄弟の弱い方とかコンビの影が薄い方とか、微妙なメンバーが大半ですが。

 前作ファンにとってうれしいのは、「九紋竜史進の師匠、王進の参加。燕青から史進の壮絶な戦死ぶりを聞くなど、ほろりとする演出です。もう一つ、前作ではついに倒せなかった宿敵、高キュウとも決着がつきます。

 生き残りの中でも主役を張れそうなのは「行者」武松ですが、前作での名セリフ「私の心はすでに灰になっております」通り、シャム行きには加わらず、寺男として生涯を閉じます。

 そして南方では、日本の「関白」との戦いが。やはり秀吉のイメージでしょうか。

 前作に匹敵するとはいいがたい出来ですが、『水滸伝』のファンなら読む価値はあるかも。私は昔図書館の東洋文庫版で読んだのですが、今は近代デジタルコレクションで『通俗水滸後伝』が読めるようです。

 

 追記 「倭国」ではなく「日本」でした。なお、田中芳樹『新・水滸後伝』という小説もあるそうなので、いずれ読んでみようと思います。