核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

裏核通その2 人と動物のあるべき関係とは

 CiNiiで伊勢田哲治氏の「人と動物のあるべき関係とは---動物福祉の考え方を深化させる--- 」というご論文を読みました。実に明快な論旨だったのですが……困りました。今日の哲学界では動物の権利、動物福祉を認める立場が主流であり、人間と動物の間に線を引く私のような立場はカント以前の守旧派のようなのです。

 私、実は伊勢田氏とは二回ほど面識がありまして、後輩たちのめでたい卒業パーティの席で、無粋にも幼稚なポパー論などふっかけたものですが……また無粋なことを言わねばならないようです。人間どうしの平和すら確立できていないのに、動物福祉を語るのは時期尚早ではないかと。

 そもそも、人間は動物の権利を語れるほど、動物を理解できているのか。オオカミにとってシカを食べるのが自然の権利なら、シカの権利はどうなるのか。シカが食べる植物の権利はどうなるのか等、素人目にも数々の疑問が浮かんできます。

 私は人間特別論者であり(人間至上主義とは少し違います)、肉食者でもあるのですが、それゆえに上記のような議論を展開しているわけではありません。食物連鎖という自然のシステムの残酷さに考えを及ぼさない限り、人間だけの残酷さを問題にしても、それはネコに服を着せてかわいがるような行為にすぎないのではないでしょうか。