白象をこきつかって儲けていたオツベルという人間が、白象を助けに来た象の群れに踏み潰される、という童話です。
マルクス主義批評ならば、労働者階級の資本家に対する勝利、とかいって済ませるんでしょうけど。人間と動物のあいだを考える立場から、もう少しだけ細かい読みをしてみようと思います。
まず冒頭の、「ある牛飼いがものがたる」という一文。語り手は「牛飼い」つまり、オツベルと程度の差はあれど、動物を使って利益を得る立場の人間なわけです(もし食肉用として牛を飼っているとすれば、オツベルよりも罪深いとさえいえるかも知れません)。実際、作中には「オツベルときたら大したもんだ」という賞賛の言葉はあれど、直接の非難の言葉はありません。
アニマルライツの物語というわけでもない、と思うのは、最後の謎めいた一行、「おや[一字不明]、川へはいっちゃいけないったら」です。
解釈に苦しむ一行ですが、語り手が牛飼いだということを考慮すれば、これは牛に「白象みたいに逃げちゃいけないったら」と呼びかけている、のだと私は解釈します。オツベルや牛飼いが特に悪人だと言いたいわけではなく、人間と動物の関係は常に一方的搾取であるというのが本作の主題だと思うのです。
……といった程度の感想ならば誰かがすでに書いてそうなので、論文にはしないでおきます。