『日本文壇史 2 新文学の開拓者たち』(講談社文芸文庫 一九九五)より。
伊藤整は、近代日本文学の、「良心の訴えと自己のエゴとの対立を社会秩序の中でいかに処理して生きるかという型」(二〇一頁)が、森鷗外「舞姫」の時期に出そろったとしています。以下要約。
4 森鷗外「舞姫」型 社会との調和と出世、人間らしさの切り捨て。
……こうしてみると「5」型、自分ではなく現実社会のほうを変えるタイプの文学が、近代日本文学にいかに少ないかに気づかされます。プロレタリア文学があるじゃないかと(おそらくは伊藤整は)言うかもしれませんが、私はそれはむしろ「4」型、マルクス主義にあわせて人間らしさを切り捨てる型だと考えています。