核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

伊藤整の『佳人之奇遇』観

 『日本文壇史 2 新文学の開拓者たち』(講談社文芸文庫 一九九五)より。

 伊藤整は、近代日本文学の、「良心の訴えと自己のエゴとの対立を社会秩序の中でいかに処理して生きるかという型」(二〇一頁)が、森鷗外舞姫」の時期に出そろったとしています。以下要約。

 

 1 二葉亭四迷浮雲」型 無解決。

 2 尾崎紅葉「二人比丘尼色懺悔」型 自殺。

 3 幸田露伴風流仏」型 芸術による現実からの離脱。

 4 森鷗外舞姫」型 社会との調和と出世、人間らしさの切り捨て。

 5 東海散士佳人之奇遇」型 革命によって外的秩序を破る。

 

 ……こうしてみると「5」型、自分ではなく現実社会のほうを変えるタイプの文学が、近代日本文学にいかに少ないかに気づかされます。プロレタリア文学があるじゃないかと(おそらくは伊藤整は)言うかもしれませんが、私はそれはむしろ「4」型、マルクス主義にあわせて人間らしさを切り捨てる型だと考えています。