核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

伊藤整の木下尚江観

 伊藤整日本文壇史10 新文学の群生期』(講談社文芸文庫 一九九六)より。

 木下尚江の代表作、「良人の自白」の続編、「新曙光」について。

 

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 共同農場が、ある地主の土地の提供によって作られ、色々な困難に逢いながら建設が進められていくのがその筋である。しかしこのユートピアには本質的に悪の問題がなく、それ故に実在性がなかった。罪の意識を背景とする実在感に動かされた時のみ、木下尚江の精神は動くのであった。

 (二三八頁)

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 ……鋭い批評と思います。木下尚江評としても、ユートピア文学全般が陥りがちな失敗への評としても。