核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021) その2

 ページ順に間違い探しをやるときりがないので、最重要なとこからいきます。

 

    ※

 少なくとも私が読んだ限りでは、小林が日本の勝利を信じて疑わなかったことを示す記述は見当たらなかった。

 (中野剛志『小林秀雄政治学』 九九頁)

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 ……いくつもありますが、代表的なのを二件。

 

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 林 時に、米国と戦争をして大丈夫かネ。

 小林 大丈夫さ。

 (小林秀雄林房雄石川達三「英雄を語る」『文学界』一九四〇(昭和一五)年一一月 五八頁)

 

 我々はこの提携は戦争と深く結付くべきであるといふことを茲に覚悟しなければならぬと思ふのであります我々は必勝の信念を固めて居ります。勝つことに於て英米が勝算がある筈がない。英米が撃滅された暁に於ても我々の総和は続くといふ覚悟が必要だと思ひます。

 (『文学報国』一九四三(昭和一八)年九月一〇日中の小林秀雄の発言)

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 ……『小林秀雄全集』しか読まなかった中野氏に見つけられなかったのも道理で、この手の発言や文章はすべて全集では改竄・隠蔽されています。

 したがって、小林が戦争に抵抗していた式の言説は、中野著も含めてすべて無意味です。私の論文を読んでないのはともかく、『新潮』誌の連載さえ読まずに書いたのでしょうか。