核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

幸徳秋水が書いた小説「遠征」

 幸徳秋水という名を出すと、左右を問わず「あの大逆事件の」と身構えてしまう方が多いとは思いますが。これは日清戦争期に彼が書いた戦争小説です。

 『家庭雑誌』一八九四(明治二七)年、第三七号付録。以下、あらすじを。

 

 明治二七年九月〇〇日。日本軍まさに清国に遠征。中国生まれ(文脈からして中国大陸ではなく、日本の中国地方)の二六歳の兵士が主人公。

 故郷に帰ると、母や婚約者の従妹、弟が温かく迎えてくれます。しかし、母の「戦争は済みたるか」との問いに「否」と答えたとたん雰囲気は一変し、母は激怒、婚約者は泣き出します。そして外には大勢の足音。戦争から逃げ帰った臆病者を、巡査や村人が捕縛に来たのです。

 それらは一睡の夢で、兵士はもとの戦場に立っていました。彼は自分の里心を恥じ、翌日の激戦で壮絶な名誉の戦死を遂げるのでした。

 

 どう分析すべきか、伊勢田哲治氏のフィクション論など参考にしながら、じっくりと読み返してみます。