核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

榎本虎彦『桜痴居士と市川団十郎』(一九〇三)

 『女浪人』の脚色者が原作者を語った書。『女浪人』への言及は見つかりませんでしたが、前から探していた逸話の記事が見つかりました。

 主人公不要論と弦斎論。語り手は福地桜痴です。

 

   ※

 劇(しばゐ)には主人公が不必用 今の文学者は二言目には此劇には主人公が無いから可無(いけな)い。イヤ此脚本には主人公が一定し無いなどゝ非難をするが、劇に主人公が無ければ成らぬと云ふ規則が何処に在る?。主人公が幾人有らうが無らうが、其様な事に頓着は無い。面白く出来て居りやア夫(それ)で宜(いい)のだ。

  (百頁)

 

 日本を知つて貰ひたい 今の文学者が日本の人情を知ら無いのが極(ごく)可(いけ)ない。流石に紅葉は知て居る。弦斎も知つて居る。乃(そこ)で一般に其著作を歓迎する。

  (百一頁)

   ※

 

 デジタルコレクションの同書57/107より引用。『女浪人』は主人公固定視点なのであてはまりませんが、『仙居の夢』論に再挑戦する時のために書き写しておきます。