『大東亜戦争 少国民詩集』なんて題の本は、読まなくても「戦争ばんざい 日本ばんざい」式のクリシェ(決まり文句)ばかりに決まっているし、すでに他の方が紹介してることもあるわけです(前回の「大東亜地図」にしても、早川タダノリ氏の著作に紹介されているそうです)。で、当ブログとしてはなるべくよそとかぶらない詩句を扱っていこうと思います。
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あの怪しげな紬車(つむぎぐるま)のそばで
ガンジーは瞑想に耽つてゐる。
爺さん、何を考へてゐるのか、
横顔のガンジー。
ガンジーは絶対の無抵抗だ。
(『北原白秋全集 28 童謡集 4』岩波書店 一九八七 三八六頁)
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この「ガンジー」は『週刊少国民』一九四二(昭和一七)年九月六日初出とのこと。
北原は知らなかったかもしれませんが、この時期のガンジーは日本の軍国主義を強く批判していました。一方北原の詩には「インドは必ず独立する」との詩句もあり、ガンジーら国民会議派を讃える詩なのは間違いないようです。
インド人の独立運動家にはほかにチャンドラ・ボースという人がいて、こちらは日本軍に協力的な武闘派で、インパール作戦にも深く関わっていました。なぜボースでなくガンジーを北原は扱ったのでしょうか。
誤読や深読みの余地がまったくない『大東亜戦争 少国民詩集』の中にあって、この詩だけは何か政治的な含みを感じさせます。「何を考へてゐるのか」と問いたいのはこちらも同じです。