前回のまえがきはどうも長すぎたので、1~2頁の「はしがき」を書いてみます。
本書は、近代日本の文学者たちの、戦争を止めようとした作品を通して、戦争の止め方そのものを考えていく。
なぜ文学者なのか?他にもっと現実的な平和主義者がいたのではないか?
たとえば自由民権運動家の植木枝盛は明治初期に、国際連盟のような組織による世界平和を訴えた。
宗教家の内村鑑三は、キリストの再臨による平和の訪れを予言した。
社会主義者の幸徳秋水は、諸国が社会主義に移行すれば戦争はなくなると論じた。
しかし「現実」には、国際連盟は世界大戦を止められず、キリストは再臨せず、社会主義でも戦争は止まらなかった。
本書が扱う文学者、たとえば矢野龍渓はこれも明治初期に、国際連盟的な組織の問題点を指摘していた。木下尚江はキリスト教社会主義の文学者でありながら、再臨思想や暴力革命論に走らず、独自の絶対平和主義を展開していた。
このように、文学者たちはそれぞれ独自の、多様な、戦争の止め方を発表していた。
「話し合いで」という方法一つとっても、誰と、どのように、何を話し合うべきかを、深く考えていた。
それらの知見をひとつひとつ検証し、現代にも通じる戦争の止め方を発掘するのが、本書のもくろみである。