核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

エドウィン・アボット・アボット『二次元の世界ー平面の国の不思議な物語』(講談社ブルーバックス 一九七七)

 高木茂男訳。現代”Flatland”。数学の本みたいな題ですが、小説です。

 静岡大学の図書館から借りて読み、面白かった記憶がありますが、今でもあるかはわかりません。私が静岡大学に籍を置いていたのは二十年以上前ですので。以下、ウィキペディア「フラットランド」の項を頼りに、記憶を補完しながら語ります。

 二次元、つまり長さと幅だけしかなく、高さがない世界。そんな世界の住人(そう、人間らしき存在がいるのです)、正方形さんの語る物語。

 円に近い形ほど偉く、正多角形が男性貴族階級で、女性は直線(線分)。自分に色を塗ったりして、三角形さんが正多角形さんに見せかけたりするのは厳禁。生まれた形で一生が決まる厳格な階級社会ですが、アボット氏や正方形氏がそうした差別を是認しているのではなく、現実の(三次元の?)階級差別を風刺しているのでしょう。

 あの頃から苦悩多き三次元人だった私は、この浮世ばなれした平べったい物語(平板だという意味ではありません。うっかり女性を怒らせると線分で突き刺されるなんて話もあり、スリリングです)に惹かれたものです。当時の私もうっかり女性を怒らせ・・・・・・やめとこう。

 

 追記 初歩的なミスですが、二次元世界の女性は「直線」ではなく「線分」でした。

 つまり有限の長さなわけです。同じ二次元人には、こっちに来る線分は点にしか見えず、男性さまとの衝突事故の恐れがあるため、おしり(線分の一端)をふりふりしながら歩くよう義務づけられている、なんて挿話もありました。