『ヴィルヘルム・マイステルの修業時代』を読んだのは、まさに悩める青春時代まっさかりで、その前半は鮮烈に印象が残っています。特にミニヨン。レモンの花咲く国!
前半はほんと、そのままアニメ映像が浮かんでくるような出来だったんですけどね。
後半、「塔の結社」とかいう自己啓発セミナーみたいなのが出て来て、
ネ
タ
バ
レ
!
今までの不思議な出会いや出来事は全部その結社が仕組んでたとばらされてからは、一気にしらけました。ミニヨンが死ぬとこだけはしっかり読みましたけど。
その続編『ヴィルヘルム・マイステルの遍歴時代』も惰性で読みましたが、小説というよりはユートピア文学に近い退屈な代物で、もうミニヨンが出て来ないこともあり、まったく感情移入できませんでした。教育制度について語られる場面で、「われわれはユダヤ人を排斥せねばならぬ」と熱く論じてたとこだけ覚えています。文学部唯野教授の「ナチスの将校でゲーテ読んでたやつ、ざらにいたんだよね」という言を連想させます。
『若きウェルテルの悩み』も読んだけど、ろくに覚えてないですね。後はやっぱり『ファウスト』。幼少期にまんが世界昔ばなしで植え付けられた恐怖を払拭すべく熟読しました。原作はそんな怖い話でもなく、むしろ理不尽な話という印象です。あの結末はナシです。ホムンクルス(人造人間)が海に消えて真の生命体となるくだりは、進化論みたいで面白かったんですけど(『ファウスト』第二部は1833年、ダーウィン『種の起源』は1859年)。ゲーテは、すべての植物は一つの「原植物」から生じたという、独自のアイディアを抱いていました。親友のシラーでさえ受け入れなかったようですが。
『ゲッツ』の結末に軍備拡張競争を賛美するような言があった気がしますが、記憶があやふやなので今回は語らずにおきます。
2023・8・15追記 軍備拡張競争を賛美する言があったのは、『ゲッツ』ではなく、ゲーテの『ヘルマンとドロテーア』でした。大違いです。訂正してお詫びします。
エッカーマンの、『ゲーテとの対話』も前から読みたいのですが、近場の図書館には置いてなくて果たせずにいます。ちらっと読んだ箇所では、日本の器を「野蛮だ」とか品評してました。
総じて、ゲーテの俺スゲーぶりというか(実際、多才な人ではあるんですけど)、自己肯定の強さはあまり好きになれません。ホメロスやシェークスピアと並ぶ文豪かというと、ちょっと疑わしいようです。
2023・3・19追記 ゲーテの『エッカーマンとの対話』ではなく、エッカーマンの『ゲーテとの対話』でした。訂正してお詫びします。