私が芸術作品に求めているのは、「安心」ではなく、「不穏さ」であると前回書きました。
そうした「不穏さ」がぎゅっとつまった詩集がこれ。日本語詩を読んで感動したことがほとんどない私をも、ぐらぐらと揺さぶってくれます。まさに読むボサノヴァ。
佐藤春夫が激賞の辞を述べている反面、菊池寛や久米正雄からは罵詈雑言を受けたそうですが、むしろ名誉というべきでしょう。菊池や久米の膨大な全作品を読破したとしても、はたして一千一秒物語の一節ほどの感激を得られるかどうか。
昔、なぜか星新一の新潮文庫の巻末広告にたいていこれの広告が載ってまして(SFとは少し違うと思うのですが)、その新潮文庫で買い求め、衝撃を受けました。このたび近代デジタルコレクションで読み返すことができたわけです。鴎外全集もそうですが、古典が身近になるのはありがたいです。