とにかく明るい安村という芸人がいて、全裸すれすれのかっこでポーズし、
「安心してください。はいてますよ」
と決めるそうです。最近では英国で人気だとか。
森鴎外『灰燼』は、ムードこそ「とにかく暗い」のですが、芸風は安村氏に似ています。自然主義陣営が、「裸になれ、裸になれ」と言うものだから、慣れない裸芸を披露しかけたものの徹底できず、
「安心してください。トランスジェンダーは脇役ですよ」
「クーデターは夢落ちですよ」
と読者に言い訳しているような、かっこわるい作品です。
私は芸術作品に「安心」ではなく、「不穏さ」を求めるタイプなので、『灰燼』はこのくらいで切り上げようと思います。次は『ゼロ年代の想像力』でも読むか。