核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

河合栄治郎のソ連観(松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者の真実』(中公新書 2009)より

以下は河合栄治郎「コミンテルンの崩壊」(『社会政策時報』一九三三年三~五月号)の概要なのですが、原文未見につき松井慎一郎氏の要約によります。 まず、河合が深く共感したという、ローゼンベルク『ボルシェヴィズムの歴史』(1932)の内容から。 ※…

河合栄治郎と『経済往来』誌、日本評論社(松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者の真実』)

河合栄治郎や土田杏村が論文を寄せた『経済往来』という雑誌は、前から気になっていました。松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者の真実』(中公新書 2009)にその由来が載っていたので引用させていただきます。 ※ 現在、法律関係を中心とした出版活…

松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者』(中公新書 2009)より 晩年

戦時下にあってもファシズム勢力との法廷闘争を続けた河合栄治郎。なのですが、今回は残念な話です。 公判が開始される直前の1941年2月、河合は『国民に愬う』という論文を書きました。米英との戦争を不可避とし、日独伊三国同盟という「道徳的義務」の…

文学研究者にとっての幸不幸

文学研究者にとっての幸福とは、価値のある研究を産み出すこと。 不幸とは、価値のある研究を産み出せないこと。それにつきるようです。 出来れば、幸福の見本を示したいものです。

きのこの醤油バタースパゲティ

国会図書館、6階食堂の新メニューです。550円という値段、国会図書館で過ごす貴重な時間を費やす価値は十分にあります。 見た目はミートソースのソースを少し黒くしたようなものですが、味は「どんなにか美味しゅうございましょう」と、お登和嬢も認めそ…

ロック『統治論』における無抵抗主義批判

ロックという思想家の最大の功績は、君主に対する抵抗権を認めたことでした。 王権神授説の論者バークレィ(1546~1608)の、「抵抗は畏敬の念をもちつつなされなければならない」「抵抗は復讐や処罰を伴ってはならない」という説に対して、ロックは…

佐野学・鍋山貞親「共同被告同志に告ぐる書」(『改造』1933(昭和8)年7月号掲載)

いわゆる転向声明(=共産主義やめます宣言)の最初のものとして有名な文書です。同年の2月20日に『蟹工船』の小林多喜二が虐殺されるなど、同主義への弾圧が強まっていたこともあり、この転向声明についで「一ヶ月のうちに獄中被告の三五パーセント、一…

河合栄治郎「マルクスより出でてマルクスを克服するもの」(『中央公論』1929(昭和4)年1月)

『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)より。 誤解を招きそうな題名ですけど、マルクスを擁護する内容ではありません。「筆者はマルクス主義者ではない。過去に於て之に反対し、今後も亦之に反対を継続するであろう」というのが河合栄…

土田杏村「河上肇論」(『中央公論』1929(昭和4)年7月号) 雑感

オタどんさまも関心を持たれたようなので、もう一本だけ土田杏村を読んでみることにします。言及されている河上肇その他と読み比べたわけではないので、ひとまず雑感とさせていただきます。引用は例によって、『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書…

マスオ、才能開花

(タイトルには読点が入るようなので直しました。『サザエさん』7月21日放映分の三話目です) あの全自動卵割り機話(父さん発明の母)以来、久しぶりの発明ものです。 サザエさんからカツオブシ削りを頼まれて何かに目覚めたマスオさんが、グルグルダシ…

そして緑のきつね

緑のたぬきのそばに油あげ。こちらは想定どおりの味でした。「紺のきつねそば」はもうあるし。 美とか感動には、意外性という要素が不可欠だと思うのです。小説でも絵画でもゲームでも、最初に出会った時の感動は二回目以降にはどうしても薄れるものです。

赤いたぬき

ある方のブログに先を越されたプロジェクト、遅ればせながら試してみました。 赤いきつねと緑のたぬきのフタを開け、具とスープを交換する。 まず赤いたぬきの方ですが、このまま商品化していいくらい違和感のない味でした。 どん兵衛からはでてるわけだし。…

土田杏村「転向没落問題・自由主義・戦争論」(『経済往来』1933(昭和8)年8月号)

河合栄治郎の「混沌たる思想界」の半年前に出た、土田杏村の時事論文です。 直接に河合を名指し批判してはいないのですが、「自由主義」への批判には力を入れており、読み比べる価値はあると判断しました。 ネット上でも読めますが、今回の引用は、『近代日…

河合栄治郎「混沌たる思想界」より、その自由主義観。

河合栄治郎は自由主義を、「一面にファッシズムに対抗すると共に、他面に於てマルキシズムに対抗する」ものと位置づけていました。 ※ 人は自由主義に負担者となるべき階級のないことと、自由主義者が一集団に結成されてゐないことを咎めるかも知れない。然し…

河合栄治郎「混沌たる思想界」(『中央公論』1934(昭和9)年2月号)

引用は『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)によります。 本当は土田杏村目当てで借りてきたのですが、河合栄治郎(かわいえいじろう 1891~1944 杏村と同年生まれ)のこの論文が圧倒的に面白かったので、先に紹介させていた…

土田杏村「日本は何処へ行く?」(『経済往来』1932(昭和7)年4月号)

そもそも土田杏村全集からして、いなかの図書館には置いてないのです。 かろうじて、流動出版『《復録版》昭和大雑誌・戦前篇』(1978(昭和53)年)という本に上記の時事論文が採録されていまして、ひとまずここから入ることにします。 日本の(昭和…

清水真木『忘れられた哲学者 土田杏村と文化への問い』(中公新書 2013)

忘れられた哲学者(私は覚えてます)こと、土田杏村(つちだきょうそん 1891~1934)を再評価する新書です。 (以下、7月16日23時55分追記) 務台理作の編んだ土田杏村全集には、代表作である『象徴の哲学』が収録されておらず、これなくして…

格付けされる文学のことなど

私が「平和主義小説」と認定した小説やその作者は、一般的な文学史ではなぜか「通俗的」というランクに格付けされていまして。それに対して書くべきことは大量にあるのですが、8月20日までにまとまるかが問題です。

『日本文学』11月号特集 格付けされる文学―懸賞と文学賞の近代

日本文学協会公式サイトより。8月20日締め切りとのことです。 11月号特集 格付けされる文学――懸賞と文

森本隆子『〈崇高〉と〈帝国〉の明治 夏目漱石論の射程』(ひつじ書房 2013)

この森本先生という方は、静岡大学および同大学院での私の恩師にあたるわけですが、だからといってお義理で取り上げたわけではありません。「第二部 異性愛と植民地―もう一つの漱石」中の「第八章 米と食卓の日本近代文学誌」は本書中の白眉であり、私がとっ…

無神論者ヒュームの死

ロックの『寛容についての書簡』は、キリスト教内のみならず他宗教への寛容を訴えた貴重な論ですが、それでも「神の存在を否定する人々は、決して寛容に扱われるべきではありません」と断言しています(『世界の名著32 ロック ヒューム』中央公論新社 19…

村井弦斎『食道楽』における玄米と脚気

いつもながら、弦斎が明治時代には早すぎた一例。 ※ 「僕は夏になると脚気が起っていかん。脚気は白米の中毒という説だから去年の夏は玄米とパン(原文漢字)ばかり食べていたら脚気が起らなかったよ。脚気がなくとも米の滋養分は糠(ぬか)にあるから玄米で…

『サライ』2003年5月1日号 特集 発掘 漱石を凌ぐ、明治の大ベストセラー『食道楽』

10年前には村井弦斎の存在を知らなかったので、古本屋で買ったと記憶しています。「ビーフ・スカラップ」「ライス・ブラマンジ」など『食道楽』に書かれた料理を、赤堀栄養専門学校の細川寿美子先生が実際に作り、カラーページで紹介しています。 弦斎を主…

そろそろ18きっぷ

遠出は七月下旬になってからにしようかと思います。

『浅草紅団』ノートの所在

世田谷文学館にあるとばかり思っていましたが早とちりでした。 イベント終了後、川端記念館に戻ったようです。 探索の旅はふたたび始まる。

半藤一利『日露戦争史1』(平凡社 2012)中の村井弦斎の記述

同書の26~27ページに、村井弦斎の小説「匿名投書」のあらすじが紹介されています。 ※ たとえば明治二十三年発表の村井弦斎という流行作家の「匿名投書」という作品がある。 ある日本人の匿名の新聞への投書に、ロシアのアジア侵略の野望を口汚く攻撃す…

ラリー・ガラ他編著『反戦のともしび―第二次世界大戦に抵抗したアメリカの若者たち』(明石書店 2010)

副題の通り、日本やドイツやイタリアとの戦争に、というよりもすべての戦争に反対し迫害や投獄に耐えぬいた方々の、貴重な体験談です。 たとえば編著者の一人、ラリー・ガラ氏(1922年生まれ)はこう語っています。 ※ ロンドン、ドレスデン、ヒロシマへ…