核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

デカルトの慎重さ(伊藤勝彦『デカルトの人間像』勁草書房 1970)

「デカルトの慎重さ」(la prudence de Decartes)については、専門家の間でも意見がわかれているようです。 以下、伊藤勝彦氏の『デカルトの人間像』より、諸説を紹介した箇所を引用します。本来、こちらを先にすべきでした。 ※ ガリレイ事件は一六三三年六…

デカルトが地動説を発表できなかった事情

まず、『デカルト著作集 Ⅳ』の訳注と解説(433ページ)をもとにした地動説年表を。 1600年 コペルニクス説(地動説)支持者のジョルダーノ・ブルーノ、ローマで火刑。 1610年 ガリレイ、木星の衛星を発見。 1616年 コペルニクスの書が法王庁…

デカルト 『宇宙論』(白水社『デカルト著作集 Ⅳ』 1973 原著1677)

「第十章 惑星一般について、特に地球と月について」と題された章。 天の「中心を占めているのは」惑星ではなく、「太陽その他の恒星である」という前振りで、三重の円の図が提示されます。 中心に太陽S。その周囲の大きな円に惑星T。Tの周囲の円に惑星☾(…

渋江保の主権論・普通選挙論(森鴎外『渋江抽斎』 その百三 より)

二日間のごぶさたをお詫びします。デカルトには及ばないながら、寒い国への旅から帰って参りました。で、今回も小林秀雄ともデカルトとも関係のない話題です。 渋江抽斎の息子の保(たもつ)と、福地桜痴や島田三郎との関わりについて。 ※ 抽斎没後の第二十…

デカルトの初恋 (白水社『デカルト著作集 Ⅲ』1973 「書簡集」 より)

小林秀雄とは何の関係もありませんが、ほほえましい話なので引用してみます。 友人のシャニュあて、「ハーグ、一六四七年六月六日」とある手紙の一節。 ※ たとえば、私は子供のころ、同い年の女の子が好きでした。ところが彼女は、いくぶんやぶにらみであっ…

『ビュルマンとの対話』 (白水社『デカルト著作集 Ⅳ』 1973)

1648年。二十歳のオランダ人神学者ビュルマンが晩年のデカルトを訪れ、その質疑を口述筆記したものだそうです(解説 444ページより)。 たとえば前回の、神の存在論的存在証明について。ビュルマンは『省察』の「私は二つまたはそれ以上のこの種の神…

デカルト 『哲学原理』における神の存在論的証明、その他

「一 真理を探究するためには、一生に一度は、あらゆる事柄について、可能な限り疑わなければならない。」 (『哲学原理』「第一部 人間的認識の諸原理について」 引用は白水社『デカルト著作集 Ⅲ』1973 33ページより) こんな感じで、デカルト哲学の…

デカルト「方法序説」における動物機械論

有名な議論ではありますが、せっかくなので引用してみます。図書館への返却日も迫ったことだし。 白水社『デカルト著作集 Ⅰ』(1973)。「方法序説」第五部より。 人間とオートマット(自動機械)の違いは、「ことばや記号を使うこと」「どんなできごと…

小林秀雄 「様々なる意匠」に引用されたデカルト その2(中間報告)

困りました。どうしても以下の一節に相当する文章が、『デカルト著作集』に出てこないのです。小林秀雄「様々なる意匠」(『改造』掲載文より)。 ※ たゞ、一つの意匠をあまり信用し過ぎないために、あらゆる意匠を信用しようと努めたに過ぎない。そして、次…

村井弦斎 「感興録」(『婦人世界』1920年9月号)

村井弦斎が晩年に到達した世界平和論。黒岩比佐子さんの「村井弦斎の英文小説とマーク・トウェイン」(『図書』2009年7月)にも紹介されていますが、かぶらない範囲で引用してみます。「火星の人」という小見出しの章です(52~55ページ)。 ※ 地球…

黒岩比佐子 「村井弦斎の英文小説とマーク・トウェイン」(『図書』2009年7月)

もう4年も前の文章なのですが、前に国会図書館で検索した時には見つからなかったので、今まで見送っていました。不明を恥じる次第です。 村井弦斎が日露戦争期に発表した英文小説『花子』に、『トム・ソーヤの冒険』の作者が書き込みをした本が発見された、…

日本近代文学館は高かった

国会図書館にもなかったり、デジタル化作業中で閲覧不可の資料がけっこうたまったので行ってみたのですが。 まずJR山手線で渋谷まで行き、京王井の頭線で二駅(片道120円) そして入館料300円(初回のみ。割引あり)。 きわめつけは白黒コピーが1枚1…

有楽町博士

水道橋博士あり、御茶ノ水博士あり。有楽町博士がいてもいいのではないのでしょうか。秋葉原博士という説もありますが。世田谷は今回見送りで。

小林秀雄「様々なる意匠」に引用されたデカルト

なぜ私がデカルト著作集全四巻なんてものを読み出したか。理由の一つは、小林秀雄「様々なる意匠」末尾にある、次の一節の出典を探すためです。 旧字体は新字体に改めましたが、それ以外の表記は『改造』誌に「文藝評論二等当選」として掲載された原文のまま…

デカルト 「平和の訪れ」 (1649 引用は『デカルト著作集 4』 白水社 1973 より)

書物の学問に限界を感じ、「世間という大きな書物」を読むために従軍した哲学者、というのが一般的なデカルト像かと思います。 そんなデカルトが死の直前に、平和(三十年戦争の終結)を題材に舞踊劇を書いていたことは、あまり知られていないのではないでし…

福沢諭吉が見た福地桜痴(『福翁自伝』より)

福沢諭吉と福地源一郎(桜痴)は、明治前期に「天下の双福」とならび称された著名人なのですが、福沢が福地について語った文は少ないようです。 その数少ない例外。慶應通信『福翁自伝』(1957(昭和32) 原著1899(明治32))166ページ、「…

神さま業がイヤんなる(姉妹社『よりぬきサザエさん 12』(101ページ)より)

長谷川町子という方の非凡さの一つは、キリスト教徒にもかかわらず、そしてあれほどの影響力を持ちながら、作品中で護教や宣伝を一切しなかった点です。 その、来世や神を扱った数少ない例外を以下に紹介します。サザエさん本人は横で見てるだけという、後期…

磯野フネの顔を持つヒットラー

別に、長谷川町子先生が戦時下にヒットラーを礼賛していた、という話ではないのでご安心ください。むしろ、その逆の証拠です。 『長谷川町子全集三二巻 サザエさんうちあけ話 サザエさん旅あるき』(朝日新聞社 1998)より。 「サザエさんうちあけ話」の…

『長谷川町子全集 第三二巻 サザエさんうちあけ話 サザエさん旅あるき』 朝日新聞社 1998

以前に報告した、サザエさん絵で描かれた小林秀雄についての続報です。著作権の都合上画像は出せませんので、ページ数を明記しておきます。 同書15ページ。「サザエさんうちあけ話」の文章の一部を引用します。 ※ 夏は、先生(引用者注 田河水泡)とアイス…

初かぜ

この二日間はブログも更新できない体調でしたが、ようやく回復しました。 明日は図書館で、デカルトと『サザエさんうちあけ話』借りてきます。

5五将棋(コンピュータ将棋協会監修 『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』 技術評論社 2012)

複数ソフトの多数決合議方式を実験するために、5五将棋という簡易ルールが紹介されていました。 紙で仕切りをすれば、ふつうの将棋盤でもできそうです。 一 二 三 四 五 1 飛 角 銀 金 玉 2 歩 3 4 歩 5 玉 金 銀 角 飛 ルールは普通の将棋と同じ。成…

コンピュータ将棋協会監修 『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』 技術評論社 2012

もはや清水市代女流王将や故米長邦雄永世棋聖のごとき一流プロでさえ、コンピュータに勝てなくなり、むしろ「コンピュータ将棋の弱点を探る」(第十章章題)方が重要な問題になりつつあります。もう専門的な話題にはついていけそうもないので、歴史的な経過…

伊沢家のブタ肉(森鴎外『伊沢蘭軒』)

何年の話かは不明ですが、すぐ後に渋江夫妻とウナギを食べる話があるところから、幕末の事と思われます。 薩摩藩から阿部家藩医への贈り物というのも、なんか政治工作を感じさせます。例のごとく青空文庫よりそのまま引用。 ※ その二百八十 わたくしは榛軒 …

「三河入道、遁世の事」(『宇治拾遺物語』より)

本来なら今昔物語から読むべきだったのですが、あっちは冊数が多すぎたので。 「鼻」「芋粥」といった芥川文学や、こぶとりじいさんの原作(「鬼に瘤取らるる事」)もあるわけですが、今回のめあては動物関係です。 巻第四、「七 三河入道、遁世の事」。小学…

どろばう(森鴎外 『渋江抽斎』より)

幕末の医師、渋江抽斎(しぶえちゅうさい)は勤王家でした。ある貴人のために八百両の寄付金を集めていたのですが、その使者と自称する三人組が金をゆすりに現れます。その時、入浴中だった妻の五百(いお)は。例によって青空文庫より。 ※ その六十一 刀のh…

めでたう(森鴎外 『伊沢蘭軒』より)

伊沢一族の主君であり、幕末には老中として政界で活躍(?)した阿部正弘。そんなアベさんのお正月風景です。 森鷗外の史伝『伊沢蘭軒』。青空文庫より引用します。 ※ その二百四十四 天保八年は蘭軒歿後第八年である。此年の元旦は、阿部家に於ては、新主正…