核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2013-12-01から1ヶ月間の記事一覧

野村博『新訂 ラッセルの社会思想』法律文化社 1979

同書46ページ、ラッセルの『政治的に重要な欲望』の要約より。 人間の好戦性を支える欲望について。 ※ その一つは「興奮欲」(Love of Exicitement)であって、ラッセルによると、人間は退屈に対する能力で獣類よりも優越性を示しているのであって、退屈か…

村井弦斎「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」(『婦人世界』1921年11月号) その2

まだ正確な時期は特定できていませんが、大正期の村井弦斎が大きな心境の変化を体験したのは確かです。 以前にも紹介した、大正10年の「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」より。信長・秀吉・家康に擬されている、ホトトギスの句を引いて、 ※ 私の若い…

『千一夜物語』(『世界文学大系 73』 佐藤正彰訳 筑摩書房 1964) その3

「気の毒な不義の子のややこしい物語」。不義密通者やその子にも同情すべき点はあるという主題の物語です。第一夜からこれをやったらシャハラザードの命はなかったところでしょう。八百三十夜までひっぱった甲斐がありました。 ※ シャハリヤール王は言った、…

『千一夜物語』(『世界文学大系 73』 佐藤正彰訳 筑摩書房 1964) その2

シャハリヤール王はいかにしてミソジニーを克服したか。この世界文学大系版は全訳ではないのですが、目につく限り引用してみます。 ※ 王はこの言葉(引用者注 物語を始める宣言)を聞くと、また一方では不眠に悩んでいたおりから、シャハラザードの話を聞く…

『千一夜物語』(『世界文学大系 73』 佐藤正彰訳 筑摩書房 1964)

アリババとかアラジンではなく、枠の話です。つまり第0夜とか第1002夜の。 妻の不義を知って女性嫌悪に陥ったシャハリヤール王は、大臣に命じて毎夜新しい妃候補を連れてこさせては、気に入らずに一夜で殺す、という所業を三年に渡って続けていました。…

村井弦斎「感興録」(『婦人世界』1920年12月号)~平和時代のその先

前に引用した「感興録」(9月号収録分)と同じマイクロリールに収録されていたのに、前回の調査では見落としていました。この12月号収録分が弦斎平和論の決定版であり、おそらくは弦斎の書いたもっとも格調の高い文章です。当ブログ1000回記念として…

村井弦斎「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」(『婦人世界』1921年11月号)

村井弦斎はいつから絶対平和主義に目覚めたのか。そして最終的にはどこにたどり着いたのか。 それを知るために、月刊『婦人世界』の連載をまとめ読みしてみた結果、こんなのが見つかりました。 ※ (豊臣秀吉は)天下を平定した後、初めて大陸に手を付けよう…

やっぱり、弦斎は新聞で読まないと

明治の新聞5年分となると、1日や2日では無理だとは思いますけど。リールのセットに毎回手間取るのです。大事な資料を傷つけないよう、あせらずに読めるとこまで読んでみます。

ブタの目

実際の豚に白目はありませんし、小泉吉宏先生のように黒目だけ描く手法もありなんですけど、私は白目を入れる派です。豚とブタの差異を表象する記号ということで。 2014・1・23追記 いちがいにないとも言い切れません。今度本物の豚を見たら確認して…

新興古書大即売展(於東京古書会館)

金はないけどひまはある。ついでに問題意識もありまくる。そんな私に。 ※ 期間 2013/12/20~2013/12/21 場所 東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 TEL:03-5280-2288(会期中のみ会場直通) 内容 他 取り扱い分野:和装本、和漢古典籍(含稀覯本)、版画、刷…

絶対平和主義の彼岸

「石の吸物」というからには、本当に無生物だけを食する話を期待してたんですけど。 後に軍備撤廃と木食断食を訴える人物だからといって、フライングで期待してはいけないという例です。そうなった時には小説家やめてるし。

村井弦斎『食道楽 続篇』「春の巻」 「第八十一 石の吸物」 続き

正確には「第八十二 金海鼠」の一節です。 ※ 「此石には何の味も無いがよく捜して見ると鮎の卵が二つ三つ石について居ます、即ち今日の御趣向は鮎の卵のお吸物に在るのです」 (148~149/193) ※ ・・・別に教訓を引き出そうとかそういう気はあり…

村井弦斎『食道楽 続篇』「春の巻」 「第八十一 石の吸物」

『食道楽 続篇』は、岩波文庫からの復刻はまずないだろうし、私もあの戦勝ムードに浮かれた冒頭部分は高く評価できませんでしたが、捨てるには惜しい話もありまして。 この「石の吸物」なんかは、『食道楽』正続きっての珍料理です。 茶の会の流行する名古屋…

「御馳走なさい」

村井弦斎『食道楽 続篇』「春の巻」はしがきより。 家庭の幸福を長く保つにはという問いに、答えは一言「御馳走なさい」だったという小話が、西洋にあるそうです。 「嫁のメシがまずい」スレの乱立ぶりを見ていると、うなずける気もします。 後段では、多嘉…

日本社会文学会 2014年度春季発表者募集

同会公式サイトより転載。 ※ 2014年度春季大会研究発表募集 2014年度春季大会テーマ「グローバルアジアと社会文学――歴史から未来へ」に関わる研究発表を募集します。 発表を希望される方は、2014年3月15日必着で、運営委員会宛に発表題目と発表要旨(400字程…

オマージュなどしない

昨今の苦々しい風潮の一つに、「オマージュ」と称して先人のアイディアをなぞる、というものがあります。 無断盗用よりはずっとましなのですが、プロの創作者としては安易な行為だと思います。本当に過去の偉大な創作者に敬意を払うなら、表面ではなく、創作…

八杉佳穂「チョコレートの歴史 : 飲み物から食べ物へ」(『てんとう虫』 43(2), 26-29, 2011-02-01)

例によって、CiNiiに本文ありの読み物です。 4ページ目にCHOCOLAT MENIERのポスターが転載されています。 「19世紀のフランスのポスター。女の子が手にしているのは固形チョコレートのよう。食べ物となることで大きな変化を迎えた。」とのことです。 確か…

『食道楽 続編』「春の巻」 「第八十七 チヨコレート」

書けそうな所から先に片付けておきます。チョコレートに入れる砂糖だって、大日本帝国の植民地政策と関係大ありなのは承知の上で。 飲み物としての「チヨコレート」の製法を聞かれたお登和嬢。 ※ お登和嬢「チヨコレートは出し方一つで味に大きな相違が出来…

村井弦斎『日の出島』「新高の巻」その0

正直、この巻は飛ばそうか迷っています。 巻名の通り、富士よりも高い、大日本帝国で一番高い山に登る話です。 善意と人道主義に満ちあふれた帝国主義というのは、そうでない帝国主義よりましなのでしょうか?反語ではなく疑問形です。 この巻について語るに…

サザエさん「キレイになりたい」

あの髪型をやめたサザエさんは、もはやサザエさんではないのです。 茶髪に貞子にモナリザ。どれひとつとして似合いません。 美容院で何と言って注文しているのか気になるところです。

サザエさん「戸じまり用心」

ほっかむりにふろしき姿のドロボー出現。しかもCV若本規夫。 原作でもドロボーネタは名作の宝庫なのですが、いい感じにアレンジされてました。 ドロボーを目撃して「はくちゅう強盗だ!」と叫ぶカツオに、「いまは夜だ。そんなことだから成績が」とながな…

武田尚子『チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石』中公新書 2010

19世紀後半の、「食べる」チョコレートの開発と普及について調べてみました。 以下、年表形式で要約します。 1847年 湯や水に溶いて飲むのではなく、そのまま食べる「チョコレート」が誕生(85p) 1876年 アンリ・ネスレ、現在のものに近いミ…

村井弦斎『食道楽 続編』の索引

あまり話題にならないのですが、『食道楽』には本編とほぼ同じ長さの続編がありまして。 で、こちらにも本編と同様、「冬の巻」の末尾に料理索引がついています。 もしかしたら、「ハモニカ」とか「焼氷」とか「シベリア」があるかと思ったのですがありませ…

『アンクル・トムの小屋』「第十七章 自由人の防御」における暴力

ストウ夫人著 大橋吉之輔訳 『アンクル・トムの小屋(上)』旺文社文庫 1982。 奴隷解放のための暴力という問題について、ストウ夫人はどう考えていたか。その回答です。 (回答の一つ、というべきかもしれません。この挿話がすべてではないので) カナダ…

村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その6

最後まで読みましたが、「画の効用」の後は特に面白いネタもなかったので。 やりのこした宿題を片付けていこうと思います。チョコレートとか戦艦富士とか。

『別冊歴史読本 日本海軍軍艦総覧』 新人物往来社 1997

11月23日に続き、また軍艦本に手を出してしまいました。 本来の目的を忘れないうちに、戦艦富士の項を書き写しておきます。 排水量が12、649トンと書かれている以外は(『連合艦隊 上巻』では常備排水量12、533トンとありました。誤差の範囲内…

チャールズ・エドワード・ストウ著 鈴木茂々子訳『ストウ夫人の肖像』 ヨルダン社 1984(原著1889)

『アンクル・トムの小屋』の作者、ハリエット・ビーチャー・ストウの、息子による伝記です。 『アンクル・トムの小屋』という作品が火をつけた奴隷解放運動が、南北戦争を引き起こした(リンカーン談。冗談まじりにもせよ)ことについて、作者自身はどう思っ…

西原と橋本

もしかしたら、以前から出てたのかもしれませんが。 中島に次ぐカツオの級友、西原と橋本が今回はやたらクローズアップされてました。今後、ドラえもんの安雄とはる夫のごとき位置を確立できるかどうか。

村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その5 「画の効用」

村井弦斎が絵画芸術について語る、珍しい一場面です。 正確には、お富嬢に肖像画のモデルを頼みに来た、馨少年の兄の貢君のセリフです。 ※ 我邦にも大分油絵が盛(さかん)になつたが更に油絵らしい大作も見受けない、それと云ふのが畢竟油絵の趣意を誤解し…