核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」(『婦人世界』1921年11月号)

 村井弦斎はいつから絶対平和主義に目覚めたのか。そして最終的にはどこにたどり着いたのか。
 それを知るために、月刊『婦人世界』の連載をまとめ読みしてみた結果、こんなのが見つかりました。

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 (豊臣秀吉は)天下を平定した後、初めて大陸に手を付けようといふ野心を生じて、その結果が朝鮮征伐となりましたけれども、これは天運に順応しない事ですから遂に失敗に終りました。
 最初から野心を以て事を始めたものは、自分の努力で或る程度までは成功しますけれども、遂には必ず失敗に終ります。歴山王(アレキサンダア)が世界を統一しようとしたのも、拿破列翁(ナポレオン)が欧州全土に覇たらんとしたのも、皆な一時の幻影に過ぎません。最も手近い例は独逸(どいつ)のカイゼルでせう。彼は自分の力を過信して自己の力によつて欧州を統一することが能(で)きると思つた為め、遂に今次の大戦を惹起して、彼(あ)の如き失敗に終りました。
 (村井弦斎「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」(『婦人世界』1921年11月号 41ページ)
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 弦斎は日清戦争期には都新聞で「朝鮮征伐」なんて際物を書いてもいたのですが、ようやく回心したようです。前の段落では、「秀吉流の句を愛し、その主義を行はうとしたのは、全く若気の誤りであつて」とも書いています。
 典型的な軍国主義者であっても、回心することはある。少しやる気が出てきました。

 2015・8・18追記 村井弦斎「婦人の脳力には男子に異れる長所あり」の掲載号は、『婦人世界』1921年(1922年ではなく)11月号でした。訂正してお詫びします。