核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

もし私が「文学理論概説」を講義するとしたら

妄想というか、とらぬ狸の皮算用を続けます。 もし私が、苦手な文学理論についての、講義をする機会に恵まれたら。 廣野由美子『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書 二〇〇五)をモデルにしたいところです。一編の小説が、理論のレ…

星新一があったじゃないか

現代文口語体で、なおかつ私が人に教えられるほど含蓄のある作家といえば、やはりあの方です。 「エフ博士の発明もの」や「エヌ氏への珍客もの」も面白いのですが、私がやるとしたら、「星新一における戦争」というテーマはどうかと。 具体的な題名をあげる…

名状しやすいクトゥルフ文学へ

前回までの話とは無関係です。前々回とはちょっと関係あり。 仮に私が日本文学の講座をやるとしたら、と妄想がふくらみまして。 「匿名投書」や「電話機」といった明治SFは確かに面白いのですが、なにせ文語体なので、初学者にはちょっととっつきにくいか…

歌うための詩と、歌わせるための詩

作詩と作詞の区別とも言い替えられそうですが、歌詞にも自らの真情をつづった歌詞はあるし、メロディのない詩にも他者に詠わせるための詩はあるし。で今回は、「歌うための詩」と、「歌わせるための詩」という区分を設けたいと思います。 たとえば北原白秋の…

久しぶりにTRPG

三人と二匹で黒船に斬り込み、フィリップス船長を海に放り込んで全員生還しました(公式シナリオ「黒い婚礼の夜」。一部改変)。 プレイヤーさんから、「楽しかったよ」と言ってもらえるのはキーパーとして最高です。 同調圧力緩和装置としてのTRPGを目指し…

圧力釜としての四部作

森鴎外の秀麿四部作は、「同調圧力発生装置」について語っているのではないかと考えています。 「かのやうに」は擬制、「吃逆」は宗教、「藤棚」は皇族、「鎚一下」は強権と実業。 要は新時代の人間はほっとくと何やりだすか分からないから、我々上流知識階…

森鴎外「藤棚」にみる、同調圧力発生装置

ふと鴎外(鷗外。文字化けしたらすみません)の、「藤棚」という短編を思い出しました。「かのやうに」から始まる、秀麿四部作の三本目。 今回はサイト 森鴎外 - 藤棚 (salterrae.net) を参照。苦情があるようでしたら全集を読み直します。 子爵の子秀麿が、…

校歌、社歌、国歌……象徴としての歌について

「あああ ぼくらの母校 〇×小学校~」とかいうやつ。あれが昔から苦手で。 作詞したやつは現役〇×小学校生でないのはもちろんのこと、卒業生でさえなかったりするあれです。たいてい外部の人間が作ってます。君が代だって外国人が作曲に関与してます。 ああ…

陸軍の精鋭、北原白秋!

戦前に万歳ナチスを叫んでいたのは小林秀雄だけじゃない、北原白秋だって「万歳ヒットラー・ユーゲント」なんて作詞してるじゃないか、というご意見もあるかもしれません。今回は白秋の詩について。 白秋には「大陸軍の歌」もありまして。その一節を。おそら…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021) その4

従来の小林秀雄本は、「小林は戦争に協力しなかったから偉い」という論調がほとんどです(そして、それは菅原(2020)によって否定されました)。 が、中野著の独自性は、「小林は戦争に協力したから偉い」という主張にあるようです。嫌な時代になったも…

ハイデッガーのいう「自由」

図書館に行けない日なので、ウィキペディアからの引用でお送りします。 ドイツの大哲学者とされるハイデッガーが、「自由」という語をどう使っていたか。 ※ 1933年11月、(略)フライブルク大学総長ハイデッガーは「ドイツの学者の政治集会」に参加し、「ドイ…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021) その3

「昭和十八年の「実朝」から終戦までの期間、小林は沈黙したと言われている」(一二頁)とありますが嘘です。 「決戦下精神上の問題 日本文化の知的参謀本部」(『日本学芸新聞』一九四三(昭和一八)年四月一日) その5 小林秀雄 - 核兵器および通常兵器の…

ねずみのひまご

ちょっと中野論への書評を中断して、頭を冷やすことにします。 私は新興宗教と詐欺が大嫌いなのですが、新興宗教の末端信者、詐欺たとえばねずみ講の末端会員には同情します。自らの判断が招いたにせよ、彼らは被害者なのです。だからってツボ買おうとかいう…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021) その2

ページ順に間違い探しをやるときりがないので、最重要なとこからいきます。 ※ 少なくとも私が読んだ限りでは、小林が日本の勝利を信じて疑わなかったことを示す記述は見当たらなかった。 (中野剛志『小林秀雄の政治学』 九九頁) ※ ……いくつもありますが、…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021)  その1

愚著。1001円をドブに捨てました。 いくつかの類著と同じように、戦後に出た、改竄と隠蔽だらけの小林秀雄全集(新潮社 1967~168年)をもとに、戦中の小林秀雄を論ずる本です。 ゆえに全頁つっこみどころだらけなのですが、腹立たしいので何回か…

坂井米夫「裕仁さん」

太平洋戦争末期、「こうなったら、皇居にパラシュートで降りて、直接、天皇に無条件降伏を訴えよう」と提案した在米日本人、坂井米夫。 その彼が作成した文書「裕仁さん」の一節を孫引きします。いずれ国会図書館で最優先で調査し、原資料とその頁数を追記し…

リアル『女浪人』!?中沢琴

ウィキペディアで幕末、新選組関係をあれこれ検索していたら、興味深い女性を見つけました。 ※ 中沢 琴(なかざわ こと、生年不詳 - 1927年10月12日[1])は、現在の群馬県出身で新徴組に参加した法神流の女剣士[2]。兄は新徴組隊士の中沢貞祇[2][3]。 (略)…

中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書 2021 入手予定)

おととい出たばかりの本。 ※ 「政治嫌いの文学者」というイメージが強い小林秀雄。だが著作を丹念に読むと、政治、戦争への深い関心と洞察が。新しい小林像。 ※ ……やばい、先越されたかも。 ただ、「深い関心」はともかく、「洞察」は同意できません。 ヒッ…

文学を教える意義

いい歳して今さら何を、と思われるかも知れませんが。私にとっては切実な問題です。 あまり大きな字では書けませんが、私は文学国語と論理国語の分離には賛成です。 法律、経済、企業や行政の仕組み、筋道立てた議論の仕方といったものは、成人にとって必要…

たとえばボーリングのガーター

ボーリングのレーンの左右に溝が掘ってあって、左右どちらに転がりすぎてもガーターになるように。 近代知識人の多くも左右の極、つまりマルクス主義と天皇制軍国主義のどちらかに転がっていきました。ひどい例では戦前にマルクス、戦中に軍国主義に転向、戦…

「人から人へ掛け渡す橋はない」

これも『行人』中のセリフです。実際ないです。 長野一郎という人物はそれを求めて苦しみます。ドイツ語や哲学用語混じりでむずかしく語っていますが、要するに人との一体感が欲しいということでしょう。 で、「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入…

「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか」

夏目漱石『行人』中のセリフです。が、そのどれも選ばず、苦悩を何らかの形で乗り切った近代人も当然多いわけで。 以下、『行人』が書かれた一九一〇年代以降の、近代人(おもに文学者)たちのたどった第四第五第六……の道を、なるべく歴史上の順序に即して追…

近代知識人の苦悩の行方

夏目漱石『行人』の主要人物、長野一郎は言いました。(青空文庫より引用) 「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」 近代知識人の苦悩を凝縮した言葉だとか言われています。 しかし、実際に自殺した知識人…

買っちまったよ

ゆえあって著者名書名ともに書けませんが、定価四千円(税抜)の大著、遅ればせながら購入しました。 私がほとんど無知なジャンルですが、知識を仕入れるのは二の次です。私がこの本に求めているのはエネルギー源です。

伊藤整の木下尚江観

伊藤整『日本文壇史10 新文学の群生期』(講談社文芸文庫 一九九六)より。 木下尚江の代表作、「良人の自白」の続編、「新曙光」について。 ※ 共同農場が、ある地主の土地の提供によって作られ、色々な困難に逢いながら建設が進められていくのがその筋で…

ハリスに直接聞いてみた福地桜痴

福地桜痴『幕府衰亡論』(筑摩書房『明治文学全集11 福地桜痴集』)より。 アメリカの総領事ハリスというと、無知な江戸幕府要人を脅して、無理やりに不平等条約を押し付けたみたいなイメージがあります(少なくとも明治二五年にはそうだったようです)。…

幕末キャットゥルフ

猫キャラで幕末日本を旅してみたい、とのご要望があったので、『クトゥルフ・フラグメント』の二つの追加ルールを組み合わせて幕末猫を作ってもらいました。

文学教育を考える半日

購読している二誌が共に「文学教育」を特集していたので、じっくり読んでみました。無縁な話かも知れませんが……。

福地桜痴の村井弦斎評価

「言文不一致派の文学史」というゼミ発表を読み返していたら、福地桜痴が村井弦斎を評価した一節が見つかりました。 ※ 今日の様に談話(はなし)と文章とが離れて居ては幾ら文学文学と言ても駄目だ。何でも日常して居る談話の詞遣(ことばづか)ひが正しく成て、…

グラ虫毛虫

私はラクラウ+ムフの『民主主義の革命』を買ったことを後悔しつつあります。 同書はグラムシ由来のヘゲモニー論を現代に生かそうという試みなのですが、そのグラムシの理論というのが問題ありありでして。 同書「1」~「2」で語られるように、マルクスの…