核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

北原白秋

北原白秋の反戦詩、その2「地雷爆発」

また北原白秋の爆発ネタ、戦争賛美か。と思ったら裏切られました。いい意味で。 長い詩なので要約でお送りします。北原白秋『白秋全集』(アルス 一九三〇(昭和五)年)収録。 第一次世界大戦下の青島(チンタオ)が舞台。二人の中国人が畑仕事をしながら、…

北原白秋の反戦詩(?)「今夜のお月さま」

北原白秋関係をデジタルコレクションで検索していたら、「北原白秋の反戦詩」という、気になる語句を見つけました。 松本恭輔「「聖戦」を鼓舞した詩人たち」(『新日本文学』一九九五年一二月)という論文で、「北原白秋の反戦詩」として紹介されている、一…

『辻詩集』が読める!

またしても国会図書館様に感謝です。デジタルコレクション万歳。 すばらしい詩集だから、というわけではありません。 太平洋戦争に「協力」する詩を集めた、悪名高いアンソロジーです。 「戦争詩」というジャンルを考える上では、熟読せねばならない本です。…

「汝」と書いて「な」と読ませる詩

村井弦斎の代表作『食道楽』に、以下のような詩論があります。青空文庫様より引用。 ※ 「新体詩なんぞに汝なんじと書いてナと読ませてナの俤おもかげとかナの姿とか読ませる。文字を見ずにただ聞くと菜なの花はなが幽霊になったようだ。少年時代に散々困難し…

死や犠牲や戦争の美化に抗して

もう少しだけ、北原白秋よりの話を続けます。伊藤野枝論に軟着陸するために。 「邪宗門秘曲」から絢爛たる南蛮趣味の語彙をとり去り、構造のみを三行でまとめると、以下になります。 「われは思ふ、末世の邪宗、切支丹でうすの魔法。 いざさらばわれらに賜え…

火つけ白秋

月も変わることだし、北原白秋ネタはこのへんで一時打ち切って、伊藤野枝「火つけ彦七」論にもどろうと思います。 とはいえ、問題意識は共通とはいえないまでも連続はしています。公正世界仮説、すなわち、 「自分(たち)はこれだけの損害を受けた。従って…

北原白秋の単調さと公正世界仮説

たとえば、以下のような詩が、北原白秋の代表作とされています。「赤い鳥小鳥」。 ※ 赤い鳥 小鳥なぜなぜ赤い赤い実を食べた 白い鳥 小鳥なぜなぜ白い白い実を食べた 青い鳥 小鳥なぜなぜ青い青い実を食べた ※ ・・・・・・非科学的な上に、どうしようもなく単調な…

かの美(は)しきエレキの夢

もういっこ、「邪宗門秘曲」で気になったのは、 ※ かの美(は)しき越歴機(えれき)の夢は天鵝絨(びろうど)の薫(くゆり)にまじり、 珍(めづ)らなる月の世界の鳥獣(とりけもの)映像(うつ)すと聞けり。 ※ の箇所。美しいものを「美しき」と表記する…

「ら」の字が気に入らない

古語の「われら」は一人称単数の意味で使われていたり(『宇治拾遺物語』)、二人称で使われた例すらあるとのことで、ちょっと自信がなくなっています。 しかし、冒頭で「われは思ふ」とある以上、以下の「邪宗門秘曲」にある「われら」が一人称単数や、まし…

『邪宗門』また一周してみたけど

「邪宗門秘曲」の一節、 「願ふは極秘、かの奇しき紅の夢」 を上回る言葉には出会えませんでした。 もう少し若く、苦悩していた時期なら響いたかも知れない言葉はありましたが。 しかし、こういうのがよい詩だとしたら、今の私が求めているものではないよう…

とはいえど

「邪宗門秘曲」に特化した先行論文もあるので、今日中に国会図書館に注文しようと思います。 木下杢太郎の影響や、語彙の共通点をあげたものが多いようです。近場の図書館でそのへんや、北原・木下ら五人の紀行文「五足の靴」も読み返さなければ。 この「五…

本日の予定

今日は日曜日なのですが。 どうも伊藤野枝論にもどれる気がしないので、本日は一日、かねてから気にかかっている、北原白秋「邪宗門秘曲」について書き倒そうと思います。 CiNiiで検索すると、高橋和巳や芥川龍之介がひっかかったりして、意外と先行研…

願ふは極秘、かの奇しき紅の夢

北原白秋は嫌いでも、 「願ふは極秘、かの奇しき紅の夢」 の一節だけは嫌いじゃないです。 「火つけ彦七」論を書き上げたら、次は自分なりに「詩」についての論文を書いてみたいです。それは結局、 「なぜ詩は戦争に抵抗できなかったのか」 というネガティブ…

児玉花外『社会主義詩集』(一九〇三(明治三六)年)も読んでみた

当時、発売禁止処分を受けた詩集なのですが、デジタルコレクションに復刻版があったので読めました。 一九〇三年は日露戦争の前年なのですが、題名通り社会主義の主張に特化した詩集で、反戦平和の詩は見つかりませんでした。 なんとなく「新体詩」というジ…

山口孤剣「戦争を呪ふ」(週刊『平民新聞』(一九〇四(明治三七)年九月))

戦争を祝う近代詩はいくらでも見つかるのに、戦争を呪う近代詩(ここでは明治~昭和戦前戦中の詩をさす)はわずかです。この「戦争を呪ふ」は、「日本ペンクラブ電子文藝館」様で読めました。(以下、コピペしたためフォントが変わってしまいました。ご容赦…

伝言ミスなり伝言ミス

テニスンが詩に詠み、日本の『新体詩抄』にも訳された軽騎兵600名の突撃は、どうやら命令の手違いで生じたようです。ウィキペディア「バラクラヴァの戦い」(クリミア戦争)の項より。 ※ ロシア砲兵が連合軍補給路を攻撃出来る場所へ展開することを防ぐた…

宮崎湖処子「厭戦闘」(『抒情詩』収録 一八九七(明治三〇)年)

アウシュヴィッツの後で詩を書くのは野蛮かも知れない。少なくとも、日本近代詩に関しては。 そもそもの出発点である『新体詩抄』がすでに、 「将の命令だ。どんなに無茶でも兵士は逆らわずに黙って死ね」(意訳) という内容なのです。そんな日本近代詩の代…

『新体詩抄 初編』読んでみた

一八八二(明治一五)年刊行。外山正一、矢田部良吉、井上哲次郎による翻訳および創作詩集。 北原白秋の詩をいくら読んでもさっぱり感動できないので、もしかしたら私の感性は古すぎるのではないかと思い、徹底的にさかのぼってみることにしました。直リンク…

ドミノと指

アドルノという人はヨーロッパ文化そのものを、アウシュヴィッツのユダヤ人虐殺を生み出した遠因と考えていたようです。私にその論を正面から反駁する力はありませんが、違う見方を提示したいとは考えています。文化という巨大で扱いづらい相手ではなく、個…

アウシュヴィッツの後に北原白秋賛歌を書くのは・・・・・・

「アウシュヴィッツの後に詩を書くのは野蛮だ」 という、哲学者アドルノの言葉があります。 私はまだろくにアドルノを読んでおらず、上記の言葉にもうなずきかねるところがあります。が、確実にいえるのは、アウシュヴィッツの後に、北原白秋の詩をほめるの…

「相討ち」「道連れ」「犠牲」にロマンを感じる心性と、その弊害

「こんなに多くの犠牲を払ったのだから、勝利が得られるはずだ」 というのは、論理的ではなくても、まだ心情的には納得できます。しかし、 「勝利が得られないのは犠牲が足りないからだ。もっと味方の犠牲を増やそう」 となると、非論理的どころか明白な誤謬…

北原白秋の差し違え嗜好

もしかしたら現代心理学に適切な用語があるのかもしれませんが、私の心理学は後期フロイトで止まっているので、とりあえず「差し違え嗜好」と命名することにします。 「思考」の誤字ではありません。断じて。 ゲームでも各種ギャンブルでもいいのですが、多…

北原白秋の非論理国語、「さしちがへ戦法」

以前にも引用した詩ですが(こういうのを詩というのであれば)、「航空母艦」。 ※ 見ろさしちがへ戦法だ。 撃沈、撃沈、また撃沈、 空母は見る見る沈んでく。 一二三四五六七。 (『白秋全集28 童謡集4』四一三頁) ※ ミッドウェイ海戦を詠った詩なのです…

論理国語の反対語は

「論理」と「文学」は反対語ではないのだから、「論理国語」と「文学国語」を分離するのはおかしい、というご意見もあるかもしれません。確かに、論理的であり、なおかつ面白い文学作品というのは存在します。 論理の反対は非論理。そこで提案ですが、「論理…

門田穰「われらも海軍たらん」(『辻詩集』より)

自爆や体あたりの詩を求めて『辻詩集』を読んだのですが、この一篇があるきりでした。家を艦艇になぞらえ、日常の生活を海軍の心で営もうという趣旨で。 ※ (略) 九軍神の歩める路を(一字不明)ら、 英米撃滅の壮挙に列せん ※ 一字不明の箇所は、「募」と…

絵心経

北原白秋の「大東亜地図」で多用されている、 [ ] ひ ● の [ ] ま Ι る みたいな感じの絵文字(うまく表現できなくてすみません)。 北原の独創かと思ったら前例がありました。ウィキペディアの「絵心経」の項より。 ※ 絵心経(えしんぎょう)は、文盲(…

『大東亜戦争 少国民詩集』「序文」(朝日新聞社出版局)

この詩集は北原白秋の没後に刊行されたもので、従って以下の序文もどこまで真に受けていいものかはわかりません。 ※ 詩はかつて、青白き感傷と抒情の紲(きづな)に自由を縛られてゐた。しかし、わが一億国民が米英の暴圧に抗して剣をとつて立つや、詩も新し…

中野敏男『詩歌と戦争 白秋と民衆、総力戦への「道」 』(NHKブックス 二〇一二)

北原白秋と戦争について論じるなら、まっさきに読むべきと判断した著書。 『大東亜戦争 少国民詩集』についての記述は多くはありませんでした。 絵文字で日の丸や落下傘を描いた、「大東亜地図」を全文引用した後に。 ※ ある意味でこれはすごい力のある作品…

自爆フェチという病

カミングアウトします。 (2022・10・14追記 カミングアウトというほど大げさな話でもないので、一行削除します) 北原白秋がどうこういう以前に、私自身にも、幼少期を振り返れば自爆フェチの傾向がありまして。 『秘密戦隊ゴレンジャー』(一九七…

「一二三四五六七」と詠う北原白秋

自爆とも体あたりとも書いていませんが、そうとしか読めない内容です。題名は「航空母艦」。 ※ 見ろさしちがへ戦法だ。 撃沈、撃沈、また撃沈、 空母は見る見る沈んでく。 一二三四五六七。 (『白秋全集28 童謡集4』四一三頁) ※ 前の連に「ミッドウェー…