核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

中野敏男『詩歌と戦争 白秋と民衆、総力戦への「道」 』(NHKブックス 二〇一二)

 北原白秋と戦争について論じるなら、まっさきに読むべきと判断した著書。

 『大東亜戦争 少国民詩集』についての記述は多くはありませんでした。

 絵文字で日の丸や落下傘を描いた、「大東亜地図」を全文引用した後に。

 

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 ある意味でこれはすごい力のある作品なのだと思いますが、こんな少国民詩が与えられてそれを我が子が真剣に読むような状況にまで到ってしまうなら、その父親たちはいったいどんな言葉を残して戦地に向かえばよかったのでしょうか。

 (二六一~二六二頁)

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 続けて、この詩には侵略され戦場となる国々への想像力が欠けていること、「詩歌による他者の痛みへの想像力の絞殺」を論じています。

 言葉というものは想像力をかきたてることもあれば、逆に想像力を封じてしまうこともあります。「自爆」「神風特攻」「玉砕」といった美しげな言葉は、それが指し示す事実と比べてあまりにも貧弱な、想像力を閉ざすタイプの言葉です。