核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

伝書鳩

私は動物全般が苦手で、ハトも例外ではありません。 ですが、村井弦斎の作品にはたびたび伝書バトが登場し、そのまんま『伝書鳩』という小説もあるくらいです。よほど関心があったのでしょう。 小説『水の月』でも、謎の人物からの手紙を、ハトがヒロインに…

長野楽水編 村井弦斎閲『夜の風』(一八九九(明治三二)年)

国会図書館サイトのデジタルコレクションで、一通り読んでみました。 文体や、物語の語り口から、どうも長野楽水とは村井弦斎の別名と思われます。 特に「和郎」「和女」と書いて「おまへ」と読ませる二人称。弦斎の特徴です。 被差別部落出身の主人公が、苦…

敵対関係を煽る書物と、敵対関係について考えさせる書物

なるべく具体的な書名は出さずに論じようと思います。 私が現代思想に類する書をあまり紹介せず、明治や古代ギリシアの本ばかりこのブログで扱っているのをまわりくどく感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、私としては世界平和への最短距離をめざしてい…

調子に乗って『八犬伝RPG』も作ろうと思ったら

私は8面体サイコロも持っているのですが、普及率は低いようです。 で、6面体サイコロと最小限の記述だけで『八犬伝』を再現するとなると、一工夫が必要です。 さっきの三国志のように登場人物を12人にするとなると、八犬士以外の四人は誰にしたもんでし…

T&T用ソロアドベンチャー「三国演武2 体験版」

本作は、「著 ケン・セントアンドレ 翻訳:安田均/グループSNE」が権利を有する『トンネルズ&トロールズ完全版』の二次創作作品です。 (C)Group SNE 「トンネルズ&トロールズ完全版」 トンネルズ&トロールズ(T&T)で無理矢理、三国志の最初の方をさくっ…

埋もれたタレントのたとえ?

ウェルズ『世界史概説』の日本語訳は、大人になってから読み直したのですが。 英語全然ダメな私から見ても、明らかに訳文がおかしく、興ざめでした。 特にひどかったのは、イエスの言葉について、「埋もれた才能のたとえ」とか書いてあった箇所です。イエス…

H・G・ウェルズ原著『世界の名作図書館46 子どものための世界史物語』(講談社 一九七〇)

ウェルズ『世界史概観』(原著一九二二)を子供向けに書き直したものです。 私は幼少時にこれを読み、多大な影響を受けました。世界史好きの原点です。 同じ本に別の作者の『十人の音楽家の物語』も収録されていたのですが、そっちにはあまり影響を受けませ…

弦斎三国志

村井弦斎が『三国志』に言及した記事。 ※ 私は支那(しな)の歴史を読む度に諸葛孔明の心事を哀れに思はない事はありません。南陽の草盧(そうろ)にあつて、数頃(すうけい)の田を耕して天然を楽んでゐたら平穏無事に百年の壽(じゆ)を保つ事が能(で)き…

火星弦斎記

一九二〇年、月に植物があるとか、火星から無線電信らしきものが届いているといった話題の後、村井弦斎は独自の文明論を展開します。 ※ 諸国の学者が頻(しきり)に火星との通信の事を研究し始めました。中には圧搾瓦斯(あっさくガス)の放射力を利用して、…

弦斎にとって「月」とは

『水の月』は、題名に反して、月世界に水があって生命体がいるとか、そういうヴェルヌ風のSFではありませんでした。そもそも月自体、話に絡んできません。 では、弦斎文学にとって月とは何か。『水の月』の二年後に書かれたメタフィクション『小説家』に、…

村井弦斎のパルチザン例外論

弦斎が世界平和への道は婦人の力にかかっているとした、『感興録』の一節。 ※ 婦人は決して殺人とか戦争とかいふ如き残酷なる事を好むものではありません。 勿論(もちろん)今日の社会には環境の事情に化せられて、パルチザンの婦人の如き残酷性を帯びたる…

平成セカイ系と明治ウチュウ系

「本常(ほんとう)にネー、地球の外から誰か見て居たら嘸(さぞ)可笑しなもんで せうネー」 三回も引用してしまいました。村井弦斎『加利保留尼亜』(一八八八(明治二一)年)の一節です。明治ウチュウ系文学と、私はひそかに呼んでいます。 それがどうし…

明治SFはなぜ宇宙を語るのか

「本常(ほんとう)にネー、地球の外から誰か見て居たら嘸(さぞ)可笑しなもんでせうネー」 村井弦斎の第一作の一節です。気に入ったのでまた引用しました。 「宇宙から見たら」という発想は弦斎に限りません。ほぼ同時期には『文明世界 宇宙之舵蔓』という…

ピサロが主人公の「モンスターズ」新作『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』が12月1日に発売決定!

私は「ニンテンドースイッチ」というゲーム機を持っていないのですが、久しぶりに気になる新作ゲームの情報が入ってきました。 『ドラゴンクエスト4』の主人公の村を滅ぼした、魔族の王ピサロ。魔王の分際でリア充彼女持ちの、今までにない人物造型。ファミ…

ミッシェル・メイソン 大原関一浩訳「男色と国家ー原抱一庵の『闇中政治家』ー」(ジェンダー史学 5 (0), 7-20, 2009)

『闇中政治家』という小説、ジェンダー論とかセクシュアリティ論でもうひと論文書けるんじゃないかな、と思ったらすでにありました。 おなじみイヴ・セジウィックのホモソーシャル論などに依拠しつつ、『闇中政治家』という政治小説が反政府活動(福島事件)…

原抱一庵『闇中政治家』も北海道が舞台なのですが

村井弦斎、遅塚麗水、村上浪六とともに、報知(郵便報知新聞)の四天王と称された、原抱一庵。彼はあの札幌農学校の中退者です(大志を抱かなかった少年です。クラーク博士の直弟子かは知りませんが)。 その抱一庵の代表作『闇中政治家』を読み返そうと思っ…

村井弦斎『加利保留尼亜』、再読

このたび国会図書館デジタルコレクションで、『明治文庫 短編小説 第一五編』収録の版を(つまり一八八八(明治二一)年の初出ではありません)、再読してみました。 「本常(ほんとう)にネー、地球の外から誰か見て居たら嘸(さぞ)可笑しなもんでせうネー…

カール・シュミット『パルチザンの理論』、届きました

一読では意図がつかみづらいので、もう何度か読み返すことになりそうです。

遅塚麗水『蝦夷大王』にみるアイヌ独立と、その問題点

国文学研究資料館の「近代書誌・近代画像データベース』に、掲載誌『都の花』(明治25~明治26)の画像があり、おかげさまで、自宅で遅塚麗水の小説『蝦夷大王』(えみしだいおう)を全文読むことが出来ます。 近代書誌・近代画像データベース (nijl.ac.…

遅塚麗水『蝦夷大王』の再審請求は取り下げます

『蝦夷大王』も読んではみたのですが(そして、家のPCでも読めると知ったのですがw)、こちらは論文にはなりそうもないと判断しました。 決して、アイヌを女性ジェンダー化して一方的にその悲劇を美化するだけの作品ではありません。作品全体を見ると、む…

手に入らない水の月。実現不可能な平和という理想?

村井弦斎の第一作(確認されている限りでの)、『加利保留尼亜』は、人類どうしでの戦争をやめ、人類をおびやかす天然力と戦うべきだという、崇高な理想を掲げていました。 しかし第三作『匿名投書』(これも確認の限りでの第三作)では、ロシア・清国の日本…

黄金島はなかった

村井弦斎の本当の第一作『黄金島』は、どうやら入手不能のようです。 以下、『郵便報知新聞』一八八八(明治二一)年三月一〇日の記事より。 ※ 募集小説評定広告 昨年本社が賞を懸けて募集せる小説は応募の寄稿無意四十七通に及へり記者仔細に之を評定して左…

『水の月』を手に入れた!

水に映った月が手に入るはずはないのですが。 『北海道毎日新聞』のマイクロリールを回し、スキャンして全文入手できました。 村井弦斎の未発見小説です。これで各地の弦斎研究会に顔を出すとき、ちょうどいい手土産ができました。もちろん、これで論文を書…

幸田露伴『雪紛々』は、国会図書館デジタルコレクションで読めます。

ある本を読んだおかげで、すっかり北海道づいてしまいました。これまで関心がなさすぎたせいもありますが。 で、この『雪紛々』。アイヌ女性の「悲劇」を描いた作品で、後半は別人との合作とのこと(まだ読んでません)。 内藤千珠子「「アイヌ」を象る文学…

やらかさなかったかも

遅塚麗水『蝦夷大王』について言及した、以下の博士論文が見つかりました。 Raj Lakhi SEN『明治文学作品を養子法・制度から読み直す』 二〇五頁、注3 コピペしようとしたら文字化けしたので要約します。内藤千珠子「「アイヌ」を象る文学」(『日本近代文…

遅塚麗水『蝦夷大王』(一八九二(明治二五)年。未読。近日中に読む予定)

原文は『近代デジタルコレクション』にもないようです。 柳田泉「明治の歴史小説研究」によりますと、「きりむかくるが愛儂人の独立を計り、一度は成功しかけるが、ついに松前侯の討手に破られて立ち腹を切るという壮烈な筋の小説」だそうです。 どーせ、ス…

村井弦斎デビュー前の幻の小説『黄金島』(一八八七(明治二〇)年)

つい先ほど『加利保留尼亜』を弦斎のデビュー作と書いてしまいましたが、それ以前に幻の小説『黄金島』を、『郵便報知新聞』に投稿していたようです。 論文、松原真「小説隆盛と新聞メディアー明治二〇年前後の新聞小説について」(一橋大学『人文・自然研究…

村井弦斎『加利保留尼亜』、国会図書館デジタルコレクションで読めました。

村井弦斎の、記念すべき小説第一作。『明治文庫』第十五編に再録されたものがPCから読めます(要ログイン)。 実は私は、冒頭の戦争否定論めいた論文だけは鮮烈に覚えているものの、その後の才子佳人の危難部分は適当に読み飛ばしていたのでした。次作『水…

「○○無謬説」は必謬への道

とりあえず、一般論から論じ始めます。 「無謬説」は「むびゅうせつ」と読みます。「謬」は「間違い」の意味。 「○○さまには決して間違いなどない!」という主張を「○○無謬説」といいます。 歴史上では、「聖書無謬説」とか「教皇無謬説」なんてのがキリスト…

今日もシュミットが届かなかったので

『シャドウラン』の、マトリックス戦闘ルールのまとめに時間を費やしてしまいました。ゲームとはいえ、これはこれで頭を使う作業です。 C(コンピューター)RPGというのは手作業のT(テーブルトーク)RPGの、めんどうな部分をコンピューターに代わっ…