ウェルズ『世界史概説』の日本語訳は、大人になってから読み直したのですが。
英語全然ダメな私から見ても、明らかに訳文がおかしく、興ざめでした。
特にひどかったのは、イエスの言葉について、「埋もれた才能のたとえ」とか書いてあった箇所です。イエスがそんな自己啓発セミナーみたいなことを言うかな、と思って、ぴんときました。
埋められた「TALENT」のことです。ここでいうタレントとは才能でも芸能人のことでもなく、古代地中海世界で使われた貨幣のことです。ギリシアの文献にでてくるタラントン。国家予算とかに使われるクラスの大金です。
主人から1タレントの金を預かった奴隷が、資産運用せずに地中に埋めておいたら叱られた、というたとえばなしなら、たしかに聖書に出て来ます。どういう含意かまでは知りませんが、たとえ「神から与えられた才能を活用しよう」という意味でも、上記の『世界史概説』は誤訳です。
こういうのは困りますが、私は今後の教育は、日本史よりも世界史を重視すべきだと考えております。自国中心主義、事大主義に陥らないために。