核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

バリ島沖海戦―亀井宏『ドキュメント 太平洋戦争全史』より

海軍大佐平出英夫が小林秀雄や河上徹太郎に「バリー島沖の海戦で、駆逐艦二隻で敵の巡洋艦二隻と駆逐艦五隻をやつつけた」と語った件(当ブログ5月22日 http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/archive/2012/5/22)につきましての追加報告です。亀井宏…

『河上徹太郎著作集 第二巻』新潮社 1981(昭和56)年

気になった箇所のみ、ダイジェストでお送りします。「」内は引用。()内は注釈と私の感想です。初出は著作集に注記されたままであり、今回は実際に初出を読んだわけではありません。 ※ 「私は率直にいはう。明治文学史を通じて偉大な小説は沢山あつた。然し…

平和主義小説の「面白さ」について

反戦小説だの平和主義小説だのって、どうせ「戦争はやめましょう」「暴力はいけません」ってお説教ばっかりで、今読んでも全然面白くないんじゃないの? そう思われる方は多いと思いますし、現に私もゼミの発表時にそうしたご意見を受けたことがあります。 …

博士論文検索あれこれ

日曜の午後のひととき、カフェオレを飲みつつ優雅に博論検索。紙媒体では怖くてできないとこです。 「明治 平和主義」 『中村敬于研究―明治啓蒙思想と理想主義―』(閲覧可)と『新宗教の平和思想―一般信徒の意識と行動』(館内限定)の2本がヒット。いずれ…

国会図書館デジタル化資料 博士論文

ある方のツイッターで知りました。国会図書館のサイトで、かなりの量の博士論文を読めるようです。 http://dl.ndl.go.jp/#etd 他の資料と同様、まだ「館内限定公開」の論文が圧倒的に多いのですけど。つまり、国会図書館まで足を運んで、そこのパソコンを使…

ハヤカワさんのカエル

さあて、先週のサザエさんは。ハヤカワさんです。 花沢さん→カツオ→かおりちゃんというトライアングルが固定して以来、出番の減った彼女ですが、実は長谷川町子先生の原作4コマにも登場する、筋目正しい登場人物です(カツオがオレンジジュースをやけ飲みす…

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その8

2012年5月18日より8回に渡ってお届けしました「海軍精神の探究」画像紹介も、今回でやっと終わりです。 戦争の記録としては役立ちそうもありませんけど(一応ウラをとってはみます)、「大本営発表のできるまで」の資料としてはそれなりに価値がある…

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その7

「小林 この間日本の輸送船が潜水艦を沈めましたね。どうしてあんなに敵は拙いかと思ふんですが・・・・。 平出 精神力が違ふのです。」 かなり海戦の常識に反する出来事だと思うのですが、先日読んだ『太平洋戦争全史』や『昭和ニュース事典』では該当する…

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その6

「小林 さういふ原理で以て、日本の合理的な戦術論といふものが書けますですね」 タモリさんですか。軍人にここまで卑屈な態度をとった文学者もそうはいないと思うのですが・・・バリ島沖海戦ともども調べてきます。いったい、この空論のどこが合理的なんで…

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その5

平出の発言に、「バリー島沖の海戦で、駆逐艦二隻で敵の巡洋艦二隻と駆逐艦五隻をやつつけた」とありますけど・・・。 ウィキペディアの「バリ島沖海戦」の項では違うようです。要調査。 (2012年5月30日追記 追加報告を載せました http://blogs.yahoo…

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その4

こうした言説は、「戦争協力」とは呼べないと思います。 日露戦争の時にも、帝大七博士なる自称知識人たちが、「日本は強い、敵は弱い」と実情からかけはなれた宣伝活動を行い、和平交渉を妨げ、犠牲を増大させました。それと同じことです。 短期決戦派の山…

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その3

大戦末期の神風特攻隊と違い、この座談会の時期には日本はまだ勝っていました。 なんでこの人たちは自爆装置にこだわりたがるんでしょうか。当人たちは「死を恐れざる精神」なんて無縁なのに。

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その2

『大洋』誌というのは全編海軍の宣伝雑誌なのですが、どの程度公的な性質のものなのかまでは調べきれませんでした。もくじと奥付もコピーしておくべきだったと激しく後悔しております。

「鼎談 海軍精神の探究」 『大洋』1942(昭和17)年5月号(4巻5号) その1

日独伊三国同盟(特にイタリア)の主唱者、大本営発表の責任者であり、特別攻撃隊(自爆攻撃)の先駆的提唱者でもある海軍大佐 平出英夫。彼の戦時中の「人気」ぶりの一例です。 2011年7月3日の学会発表では紙幅と時間の都合でごく一部しか紹介できま…

大久保昭男訳 『ヒトラー=ムッソリーニ秘密往復書簡』 草思社 1996

先に伝記のほうを紹介すべきだったかもしれませんが、上下二巻の分厚い『ムッソリーニ』を読んでも、日本との同盟のことなど1ページあるかないかなんですよ。で、ひとまず1940(昭和15)年8月27日、つまり日独伊三国同盟1ヶ月前の、ムッソリーニ…

日独伊同盟と大本営発表の責任者、平出英夫

そもそも、なんで日独「伊」三国同盟なのか。そう思った方は多いのではないかと思います。 別にイタリアをおとしめるつもりはないのですが(戦争が強い弱いなんてのは、別に名誉でもありません)、1940年時点で日本とイタリアが同盟を組む利点というのは…

1959(昭和34)年の中谷宇吉郎

雪と氷の研究家、中谷宇吉郎(なかやうきちろう。1900~1962)。『立春の卵』などの随筆でも知られた方です。 わけあって1959(昭和34)年当時の彼の動向を知りたく、文献を漁ってみました。 ※ 昭和34年(1959)年 59歳 ・孫野長治ら…

「非戦論者」同時代の評価

『光』誌1906(明治39)年11月5日、第一巻第二六号、(六)ページ。 そもそも私が同作品を知ったきっかけがこれでした。 ※ 新刊紹介 ●文庫 (十月号) 本誌には非戦論者といふ長扁小説あり、紛々たる戦争小説と異なり、博愛の大義を説き、上帝の福…

わかおみ姓

小説「非戦論者」の作者、若麻績長風の姓についてですが、ネットで検索したところ、若麻績(わかおみ)という珍しい姓は長野県善光寺の住職の家系だそうです。 「非戦論者」では、仏教の僧侶は日露戦争を正当化する側として描かれていました。もし長風氏が善…

遅塚麗水のことなど

CiNii(学術論文サイト)で検索しても、私のも含めて5本しか論文のないマイナー作家、遅塚麗水。 その筋では、かろうじて紀行文(旅行記)の作家としてのみ名前が残っているようです。 正直なところ、紀行文なんてのは2012年の読者が読んでもたいしてお…

若麻績長風 「非戦論者」(1906(明治39)年)

『文庫』1906(明治39)年10月15日、第32巻第5号収録。 作者についての調査がいきとどかなかったので(なんて読むのかさえ知りません)、学位請求論文ではふれませんでしたが、隠れた平和主義小説の佳作です。 日露戦争期(1904~05年)…

カルヴィーノ 『見えない都市』

池澤夏樹=個人編集 『世界文学全集 Ⅱー06 庭、灰/見えない都市』(河出書房新社 2009)収録。 作者イタロ・カルヴィーノはイタリアの幻想作家で、原著は1972年だそうです。米川良夫訳。 マルコ・ポーロとフビライ汗の対話という形で繰り広げられ…

山片蟠桃 『夢の代』

源了圓編集『日本の名著 23 山片蟠桃 海保青陵』中央公論社 1971(昭和46)年(原著は1820(文政3)年)。『夢の代(抄)214~215ページ。 山片蟠桃(1748~1821)は江戸時代における無鬼論(無神論)の先駆者として知られていま…

「文学局外観」 『早稲田文学』1898(明治31)年6月

村井弦斎といえば、「婦女子向け」というのが同時代(明治20~30年代)の一般的な評価です。具体的にはどう好まれていたのか、その貴重な証言がこれです。 『早稲田文学』誌の、文学の専門家ではない方々へのインタビューを集めた「文学局外観」の一つ。…

「かいじん二十めんそう」(1959~1960)

以前にも紹介した『ふしぎな人』収録。月刊誌「たのしい一年生」1959年11月から翌1960年3月まで、さらに「たのしい二年生」1960年4月から12月まで連載、だそうです(同書644ページ解説より)。ふつう学年誌の連載は年度末にきっちり終…

アクション苦手

インベーダーゲームやパックマンのころからテレビゲームやってるにも関わらず、アクションゲームはいまだに苦手です。 連休を利用して『ゼノギアス』という大作SFRPGをやっていたのですが、あるタワーにスーパーマリオのように浮き床を飛び移らないと進…

振り飛車が倒せない・・・

最近、「中」とか「大」のつかない将棋を指す機会が多いのですが・・・表題の通りです。 (将棋に関心のない方には申し訳ありません) こっちが居飛車で先方が四間飛車、というパターンが多いのですが、どうしても居飛車側は振り飛車側より防御が手薄になる…

ミノタウロス雑感

地下迷宮の奥底に潜むモンスター、というRPGの定番を生み出したミノタウロス。牛頭人身というデザインがかっこいいせいか、あちこちで見かけます。 ※ 孤独な少年の内面をつづった私小説・・・の作者がミノタウロスだったという話を、幻想小説の大御所二人が…