核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

#ノンフィクション、エッセイ

新渡戸稲造『修養』 (1911) その2

ひとつひとつの項目は平凡なんですよ。克己とは己に勝つことだとか、年末には一年を反省しろとか。 ただ、その平凡な教訓はすべて実行できる人は、十分に非凡なんじゃないでしょうか。

新渡戸稲造『修養』(1911) その1

わけあって本文を最後まで読みましたが、特に引用したい文もありませんでした。 代わりに広告ページを。

星新一「大正七年の「三十年後」」(『SFマガジン』1966(昭和41)年10月号) その2

小説『三十年後』について、星新一は「亡父の作品を解説するぐらい苦手なことはない」としつつも、いくつか感想を書いています。 ※ 小説の最初のほうに、東京湾の大築港のことが出てくる。これは後藤の構想で、(略。出資者安田善次郎の暗殺により)挫折に終…

横田順彌「明治時代は謎だらけ!星一と押川春浪」(『日本古書通信』1999(平成11)年3月号)

横田氏は押川春浪と星一の接点を追っておられ、もし江見ではなく押川が「三十年後」を文章化していたら、「もっと大ホラ話になったような気がする」そうです。私は村井弦斎に書いてほしかった。 また、横田氏が生前の星新一氏から聞いたところでは、江見水蔭…

星新一「ペンネーム」(『きまぐれ星のメモ』読売新聞社 1968 収録)

「八〇パーセントは本名」なペンネームの由来話です。 ※ 本名は星親一。私の父(引用者注 星一)は若い頃米国に留学し、各工場に安全第一の標語が記してあるのを知った。それにヒントを得て親切第一という語を考えつき、帰国してからの事業のモットーに使い…

星新一 「自動車」「おやじ」「超光速」((『きまぐれ星のメモ』読売新聞社 1968 収録)

長男の星新一による、星一にまつわる思い出三題。 ※ 私の父は大変に自動車が好きであった。明治四十年に製薬業をはじめてから、昭和二十六年に死ぬまで、自動車を愛用しつづけた。車のナンバーは三七であった。日本で三十七番目なのかどうかはわからないが、…

星新一「大正七年の「三十年後」」(『SFマガジン』1966(昭和41)年10月号) その1

『SFマガジン』に星一の「三十年後」が抄録された際の、星新一による解説です。 『週刊新潮』の掲示板で「三十年後」のありかを求めたものの見つからず、斎藤守弘氏がどこかの古本屋で探し出してくれたおかげで日の目を見たと冒頭にあります。 つまり、星…

星一『支那の歴史』(1938)

日中戦争期の星一による中国史。特に扇動的な内容ではなく、手堅く(無難に)まとまっています。 まっさきに春秋時代の記事を読んでみたのですが、向戌の弭兵(軍備廃絶)の会についての記述はありませんでした。 代わりにというか、戦国期の墨子についての…

江見水蔭「太古の戦争」(『欧州戦争実記』1916年7月号)

『三十年後』の軍備廃絶論は星一の思想であって、江見水蔭のではなかった、そう裏づけてくれる資料です。 ※ 戦争は何(いつ)の世にも有る。適者生存の為には戦争は如何(どう)しても免れぬ。 (略。三千年前のアイヌまたはコロポックルが、強健な大和民族…

星一 述『自国を知れ 進歩と協力』(1933) より 「飛行機上より見て」

どうも昭和戦前期の星一には神がかり的なところがあって、この口述本も「生産の神国化 分配の神国化」とか大々的に謳っているわけですが、中にはさすがと思わされるところもあります。 ※ 八 飛行機上より見て 一私は地上に於て自己を発見した、飛行機に乗つ…

『明治文学全集 94 明治紀行文学集』(筑摩書房 1974)

饗庭篁村・幸田露伴・正岡子規・尾崎紅葉・大橋乙羽・川上眉山・徳富蘆花・大町桂月・田山花袋・遅塚麗水・与謝野鉄幹・木下杢太郎・北原白秋・平野万里・吉井勇・小島烏水。1897(明治30)年前後の名だたる紀行文を集めた一冊です。 村井弦斎の言う、…

なだいなだ「小林秀雄なんて怖くない」(『ちくま』 2012年9月号)

以前に存在を教えていただいてから、入手するまでに手間取ってしまいました。『ちくま』は近くの書店にはなかったのです。 1964年の講演をもとにした、小林秀雄「常識について」(当ブログで以前に扱った「常識」とは別物)への、なだ氏の感想。 まず小…

「記憶」ではなく「記録」に基づく議論を。

古新聞古雑誌をあさるしか能がないのかこいつは、という想定される批判に対して、あらかじめ弁明しておきます。 人間の記憶というものはあてにならないものです。かつて熱烈に原子力発電を支持していた大江健三郎が、まるでずっと前から反対派だったような顔…

野崎左文 「私の見た明治文壇」(1927(昭和2)年)

仮名垣魯文の弟子による、食についての貴重な証言です。 角川書店『日本近代文学大系 第60巻 近代文学回想集』(1973(昭和48)年)より。 ※ (仮名垣魯文)翁の嗜好としては取立てゝいふ程のものもないが、酒は深く嗜まず甘い物も多くは食せず、唯…

「新旧・二つの顔ー倉吉」(『厳粛な綱渡り』文藝春秋新社 1965)

講談社文芸文庫版(1991)では削除された文章の一つ。「「文芸文庫」版のための編集は、物理的に分量を少なくするための整理であり、五十代なかばを過ぎた今でも、ぼくはこのエッセイ集の最初の版のすべての文章に責任をとりたいと思う」(「文芸文庫」…

大江健三郎 「最初の詩」 (『厳粛な綱渡り』 1965)

どんだけ原発好きなんでしょうか、大江健三郎という人は。 ※ 一九六〇年夏、東海村で構築中の原子炉の巨大なドオムの壁を螺旋階段をつたってよじのぼっていたとき、ぼくは、不意に幻覚にとらえられた。壁の高みで空気もれをおこす小さなピン・ホールをさが…

大江健三郎 『厳粛な綱渡り』 予告

国会図書館にも初版本がないので、講談社文芸文庫版についていた初出一覧を元に雑誌を調べることにします。 「未詳」がむやみと目立つ一覧ではありますが。 大江の生き様が「綱渡り」なのは認めます。問題は厳粛かどうかです。

伊藤整氏の精確な意見。

伊藤整『日本文壇史3』(講談社文芸文庫 1995)を読んでいて、これはという論に出会いました。1892(明治25)年の、山田美妙が文壇から総攻撃された件について。 ※ 諸方から攻撃されて以来、美妙の悪口さえ書けば批評文の形が整う、という風潮が…

小林秀雄 「常識」 『文藝春秋』 1959(昭和34)年6月 その2

重要な異同のみ指摘します。230ページ上段5行目。 ※ 「仮りに、先手必勝の結果が出たら、神様は、お互にどうぞお先へ、といふ事になるな」 「当り前ぢやじやないか。先手を決める振り駒だけが勝負になる」 ※ 一方、第五次『小林秀雄全集 第十二巻 考へる…

小林秀雄 「常識」 『文藝春秋』 1959(昭和34)年6月 その1

予定を変更して、小林秀雄「常識」の初出を紹介します。全集や文春文庫版と読み比べると、けっこう看過しがたい異同があったもので。 「考えるヒント」という副題は編集者がつけたそうですし(「役者」より)、「名人の読み」「不思議な傾向」という小見出し…

木下尚江 「小説始末記」その2(『木下尚江全集』第一九巻 教文館 2003)

一つ「小説」に立て籠もつて、非戦論を書いてやらう。そんな動機でスタートした尚江の連載小説。 ※ 偖て明治三十七年の元日から、「火の柱」が毎日新聞の第一面へ出た。平福(百穂)君が矢張り画を書ひて呉れた。実際勿体ないことであつた。 ◇ 君よ。是れで…

木下尚江 「小説始末記」(『木下尚江全集』第一九巻 教文館 2003)

絶対平和主義者はいかにして小説を書くに至ったか。その貴重な証言です。 ほぼ同じ内容の書簡もあるのですが、今回は全集初収録の早稲田草稿2006バージョンで。 ※ 君よ。 日露戦争時代の新聞社で何をして居たかと云ふ質問に対し、「始めて小説と云ふものを書…

伊藤秀雄 『明治の探偵小説』(晶文社 1986)

中学時代に読んだ黒岩涙香訳『死美人』の面白さが忘れられず、川崎市役所で働きながら涙香のコレクションを続けた(あとがきより)著者による、膨大な情報量の明治探偵小説史です。まさに労作。 1887(明治20)年11月、饗庭篁村がポーの「黒猫」を(…

黒岩比佐子 『『食道楽』の人 村井弦斎』 岩波書店 2004 ―「文学魔界」関係

村井弦斎のみならず、明治文学に関心のある方は必読の大著。 語りたいことは多いのですが、今回はひとまず文学魔界関係の記事のみ紹介します。 ※ この(引用者注 『報知新聞』の連載小説『日の出島』)中で「文学魔界」という章は、一八九七(明治30)年一…

『河上徹太郎著作集 第二巻』新潮社 1981(昭和56)年

気になった箇所のみ、ダイジェストでお送りします。「」内は引用。()内は注釈と私の感想です。初出は著作集に注記されたままであり、今回は実際に初出を読んだわけではありません。 ※ 「私は率直にいはう。明治文学史を通じて偉大な小説は沢山あつた。然し…

1959(昭和34)年の中谷宇吉郎

雪と氷の研究家、中谷宇吉郎(なかやうきちろう。1900~1962)。『立春の卵』などの随筆でも知られた方です。 わけあって1959(昭和34)年当時の彼の動向を知りたく、文献を漁ってみました。 ※ 昭和34年(1959)年 59歳 ・孫野長治ら…

「非戦論者」同時代の評価

『光』誌1906(明治39)年11月5日、第一巻第二六号、(六)ページ。 そもそも私が同作品を知ったきっかけがこれでした。 ※ 新刊紹介 ●文庫 (十月号) 本誌には非戦論者といふ長扁小説あり、紛々たる戦争小説と異なり、博愛の大義を説き、上帝の福…

わかおみ姓

小説「非戦論者」の作者、若麻績長風の姓についてですが、ネットで検索したところ、若麻績(わかおみ)という珍しい姓は長野県善光寺の住職の家系だそうです。 「非戦論者」では、仏教の僧侶は日露戦争を正当化する側として描かれていました。もし長風氏が善…

遅塚麗水のことなど

CiNii(学術論文サイト)で検索しても、私のも含めて5本しか論文のないマイナー作家、遅塚麗水。 その筋では、かろうじて紀行文(旅行記)の作家としてのみ名前が残っているようです。 正直なところ、紀行文なんてのは2012年の読者が読んでもたいしてお…

1962年の囲碁機械―渡辺一夫 「昨日今日」より

文中に「この雑文を書いた頃(一九六二年)」とあります。出典は、『渡辺一夫著作集12 偶感集 下巻』筑摩書房 1970 58~59ページ。 ※ 一 精神とウォトカ 有名な理論物理学者のS先生(1)とお話をする機会が与えられましたが、談たまたま電子頭脳…