『三十年後』の軍備廃絶論は星一の思想であって、江見水蔭のではなかった、そう裏づけてくれる資料です。
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戦争は何(いつ)の世にも有る。適者生存の為には戦争は如何(どう)しても免れぬ。
(略。三千年前のアイヌまたはコロポックルが、強健な大和民族に滅ぼされたのは当然の結果だと論じた上で)
進歩した武器を持たぬ国民は亡びる。壮健なる体格を有せぬ人種は亡びる。而してハイカラ顔をして太平に酔つて居る者は、終に絶滅して了ふのである。我等の先住民は斯くして行方が知れなく成つたのである。
(をはり)
(121~126ページ)
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…ひどいことを書いていますが、別に江見水蔭を責めたくて引用したわけではありません。欧州戦争(=第一次世界大戦)下の平凡な言説のひとつです。
平凡でないのは星一のほうです。この二年後に刊行される『三十年後』の軍備廃絶論が、後援者の後藤新平のみならず文章担当者の江見水蔭にも反するものだったということは、これで立証できそうです。