核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2012-01-01から1年間の記事一覧

研究対象 第三類

私の研究対象には第一類(反戦小説)と第二類(戦争美化もの)があるわけですが、どちらの分類にも入らないけど、気になる作品があります。 たとえば動物の立場に仮託して、平和主義者も含めた人間のあり方を問い直す作品。アリストパネスの『鳥』や、仮名垣…

私にとって文学研究とは

今回は固い話をします。 私にとっての文学研究とは、「戦争や差別をなくすために、文学には何ができるか」を探究することです。 研究対象はおおむね二種類に分けられます。 第一類は、戦争を阻止・予防するために書かれた文学作品群。明治の木下尚江、古代ギ…

思想の科学研究会編 『共同研究 転向』全3巻 下巻 平凡社 1962

(追記 書名が不正確だったので訂正しました。お詫びします。2012・12・30) 東洋文庫から少しずつ復刊されているのは気づいていましたが、完結してからまとめて読もうと思い、つい後回しにしていました。 まだ復刊していない下巻に小林秀雄の略伝が…

松本清張 『高校殺人事件』 光文社文庫プレミアム 2011

初出題名は『赤い月』。『高校上級コース』に1959年11月より1960年3月、『高校コース』に1960年4月より1961年3月まで連載されたそうです(文庫奥付より)。江戸川乱歩の「かいじん二十めんそう」もそうだったけど、年度をまたいだ長期…

創作戦隊 カラーファイブ

「うはははは。これまでだな、カラーファイブ!」 「おのれ、怪人ハードブラック」 「略してHB!」 「おいどんらの必殺技がことごとく」 「通じないなんて!」 「こんなときに、第六の戦士ホワイトイレーサーがいてくれたら」 「観念しろ。間もなく世界は暗…

カラーな文学

好きなだけ、文字に色がつけられる。ブログという媒体が学術論文より優れている点の一つです。 とはいうものの、明治文学研究ではあまり使い道はありません。 村井弦斎の「写真術」(『都新聞』 1894(明治27)年)は、色まで映る写真を日本人が発明す…

『サザエさんうちあけ話』での小林秀雄

『サザエさん』の作者長谷川町子は、戦前には『のらくろ』の作者田河水泡の内弟子をしていました。 その時期をまんが化した、『サザエさんうちあけ話』に、田河の妻の兄だった小林秀雄がひとコマだけ描かれています。 ものすごく眠そうなサザエさん顔の長谷…

『平妖伝』(予告)

念のため「平妖伝 デスノート」で検索してみましたが、こちらはそれらしき情報はヒットしませんでした。 佐藤春夫も翻訳している中国古典の傑作なのですが、本が手元にないため、覚えている範囲であらすじを紹介します。 呉越の戦いの時代。白猿神というサル…

星新一 「特殊大量殺人機」(短編集『白い服の男』収録)

引用は『星新一ショートショート1001 2 1968~1973』(新潮社 1998)より。 「星新一 デスノート」で検索すると必ずヒットする作品です。 2023・12・29追記 あらためて検索すると、星新一「特殊大量殺人機」をデスノートになぞらえ…

森鴎外 『渋江抽斎』 より その六十三(うなぎ酒)

鷗外の史伝には珍しく、おいしそうな話。いつかは試してみたいと思っていましたが、今の私は完全断酒主義なので。 青空文庫より、新字新仮名にて引用させていただきます。 ※ その六十三 鰻を 嗜 ( たし ) んだ抽斎は、酒を飲むようになってから、しばしば…

長山靖生 『奇想科学の冒険 近代日本を騒がせた夢想家たち』(平凡社新書 2007)

「奇想といっても、単なるデタラメな思いつきではない。彼らが奇想のなかで展開したのは、荒唐無稽は荒唐無稽なりに、抱腹絶倒は抱腹絶倒なりに、そして悪夢は悪夢なりに、深い理由のある奇想なのである」(9ページ まえがき)。というわけで、地球平面説の…

菅原健史「川端康成『浅草紅団』における新聞」(2003・12・16)

かれこれ10年前に書いてゼミで発表した浅草紅団論が出てきました。 たとえ世田谷文学館のノートを熟読した後でも、この基本方針は変わらないはずなので、ここに残しておくことにします。 ※ 川端康成の作品の中でも、『浅草紅団』は従来、主題の定かでない…

世田谷文学館公式サイト

http://www.setabun.or.jp/exhibition/index.htmlによりますと、たしかに1999年の横光利一と川端康成展で、浅草紅団のノートは公開されていました。 休館日は月曜日、年末は12月29日から閉館とのこと。早いうちに計画を立てる必要がありそうです。

川端康成による『浅草紅団』ノート

「川端康成 浅草紅団 ノート」で検索したところ、以下の情報が見つかりました(http://www.mysoft21.co.jp/yamanote/odakyu/yokomitu.htm)。 川端生誕100年、横光生誕101年ということは1999年。もう 1 3 年も前の記念展でした。 ※ 「横光利一と…

どうにか更新可能になりました。

昨日は「アクセス不可」と表示されたので、一瞬背筋が冷たくなったのですが、どうにかおとりつぶしはまぬがれたようです。 この時勢に核廃絶だの石原慎太郎の盗作だのを扱っていると、つい疑心暗鬼になるものです。 当ブログは今後も、「核兵器および通常兵…

『社会文学』38号特集 「大量死に立ち向かう文学言語とは」

私は日本社会文学会の会員ではないのですが、公式サイトでこの特集タイトルを読み、これはと思いました。特に「立ち向かう」のあたりが。そういう志を持つ文学研究者の存在を嬉しく思います。秋季大会に参加できなかったことが惜しまれます。 仮に私が投稿す…

島根県TRPG

最近はニャル子さんあたりの影響か、TRPGというマイナージャンルもちょっとだけ最評価されているようです。 そんな中、素人ゲームマスターは冒険の舞台を魔法世界フォーセリアから島根県に移してみました。ソードワールド(旧)のシステムに番長学園の世界観…

松本清張ベスト3

私は松本清張研究会の会員ではないし(先日はお誘いがあったので参加したわけです)、ファンなのかどうかも微妙なのですが。 とりあえず論文だの学会発表だのは考えず、いいなと思った作品のベスト3を。 1 『絢爛たる流離』 いわば清張版指輪物語(ロード…

フロイト 「戦争と死についての時評」(初出1915 『フロイト全集14』岩波書店 2010)

田村公江訳。 第一次世界大戦のさなかに書かれたにも関わらず、非常に冷静な文章です。しかし、例によってフロイトの意見には納得できません。 近代人は死を自分とは無縁に思ってきたが、戦争という現実はそれを変えつつある、という分析の後、フロイトはこ…

フロイト 「喪とメランコリー」(初出1917 『フロイト全集14』 岩波書店 2010)

伊藤正博訳。 私はフロイトを読んで納得できたことが一度もないのですが、今回もそうでした。 だいたい、フロイトのメランコリー観は次の一節に集約されるようです。メランコリー患者の自己非難は、本来の対象から離れて患者本人へと転換されたものだと。 ※ …

最相葉月 『星新一』文庫版下巻年譜

二日間もごぶさたしてもうしわけありません。お詫びに小ネタを。 上記書の単行本は刊行当初に読んだのですが。 このたび出た文庫本を立ち読みしたところ、短編集ではなく作品単位での初出一覧が追加されていました。 1001編ことごとくかどうかはわかりま…

『新潮』1961・5は見つかりませんでした。

次の上京時にまた探します。 しかし静岡も変わりました。109だの東急ハンズだの。 大学は相変わらずでした。どなたかのごあいさつで「山城」という表現が出て、会場爆笑。 よくあんなとこに毎日通ったものです。二十代の私は。

石原慎太郎の支持者層

亡き映画スターの実兄であるとか、年齢のわりには若く見えるというだけの理由で彼を支持する方を私は知っています。表面的な言動が「愛国的」だからという理由も多いようです。 少なくとも第三の理由については、まったく根拠のないものです。毛沢東独裁政権…

『新潮』1961年5月号の初出は

可能な限りすみやかに入手し、それ以前に出たヘミングウェイの日本語訳と比較するつもりです。なお、原文はある論文でほぼ全文引用されていました。

ヘミングウェイ「インディアン・キャンプ」と、石原慎太郎「通りすぎたもの」との類似

石原慎太郎の小説「通りすぎたもの」を盗作と断定します。引用元と論拠は以下の通り。 A、ヘミングウェイ 「インディアン・キャンプ」(引用は『われらの時代に』 荒地出版社 1982(原著1924) 北村太郎訳 による) B、石原慎太郎 「通りすぎたも…

幸徳秋水 「遠征」(予告)

日清戦争期の新聞記者、幸徳伝次郎(秋水)が書いた短編小説。全集に収録されておらず、コピーも手元にないので、ひとまず予告のみ。 (2021・10・28 9年の時を経てコピーが見つかりました。詳細は↓) 幸徳秋水が書いた小説「遠征」 - 核兵器および…

メランコリイ嗜好、もしくは松本清張作品の美と癒し

わざわざ研究会に行くほど、私は松本清張が好きなのか。今ではそうでもありませんが、一時期むさぼるように読んでいたのは確かです。 ゲーム業界に「鬱ゲー」(プレイヤーを憂鬱な気分にさせるゲーム)というジャンルがありますが、かつての私にとって清張は…

松本清張研究会

定員は先着120名。要予約。もう締めきったかもしれませんが一応転載しておきます。YAHOOニュースより。 ※ 「松本清張研究会」(北九州市)の第27回研究発表会が、12月1日午後2時から、静岡市駿河区大谷の静岡大人文学部で行われる。 同研究会は平成…

カールおじさんの秘密

明治カールのイメージキャラクター、カールおじさん。 先日、公式サイトで帽子をぬいだ顔を見たら、見事なすだれ頭。帽子の上にはカエルが乗ってました。 つくづく味のある、いい顔をしています。しおあじとかチーズあじといった次元を超越しています。 ・・…

幸徳秋水 「死刑の前(腹案)」

(追記 青空文庫に「死刑の前」という題で収録されていました) 筑摩書房『近代日本思想大系 13 幸徳秋水集」(1975)収録。1911(明治44)年、まさに死刑執行の直前に書かれた告白です。 全五章を予定していたのにもかかわらず、第二章の冒頭ら…