核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

松本清張 『高校殺人事件』 光文社文庫プレミアム 2011

 初出題名は『赤い月』。『高校上級コース』に1959年11月より1960年3月、『高校コース』に1960年4月より1961年3月まで連載されたそうです(文庫奥付より)。江戸川乱歩の「かいじん二十めんそう」もそうだったけど、年度をまたいだ長期連載だったわけです。
 しかし、それだけ枚数を費やした割には、最後の「真犯人」の章(268~292ページ。おそらく連載最終回)で唐突に新事実や新登場人物が現われ、まるで打ち切られたかのような印象を受けます。
 
 「さあ来い高校生。実はオレは一回刺されただけで死ぬぞオオオ」
 「やった。これで郷土資料館の扉が開かれる」
 「よく来たな。おまえは沼地の詩とむらさき草が事件の鍵だと思っていたようだが、別になくても解決する」
 「そうか。オレには生き別れた従妹がいたような気がしたが、そいつが全部持ってったぜ!」
 
 ・・・そこまでひどくはありませんが。中途でもたつきすぎたのは確かです。
 松本清張推理小説としては決してよい出来ではありませんが、作家研究の対象としては面白いと思います。この『高校殺人事件』で松本清張論を書く勇者はいないものでしょうか。