核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

星一『日本略史:「お母さん」の創った国日本』(1937) より 三種の神器とは

『三十年後』もまだ読みかけなので、この本については今回は序文のみとします。 (2014・7・1追記 「序文」ではなく「神代」の章でした) 星新一のエッセイ(『きまぐれ星のメモ』?未確認)で知ったのですが、星一は独自の哲学・神話観を持っていまし…

星一『三十年後』 その8 日本式飛行機

三十年ぶりの東京を、飛行機で案内される嶋浦翁。『大正初年には墜落又墜落で、空中の犠牲者をどの位出したか知れないもんだよ』とぶるぶるします。 少々オーバーですが、現実の1913(大正2)年には2件の墜落で3人の犠牲者が出ており、飛行機は安全な…

北尾亀男『空翔ける人』―其の六十六―(『都新聞』1922(大正11)年1月6日掲載)

先日のある学会で入手した、配布資料に一回分だけ載っていた小説です。 菅沼と収三の乗った飛行機が墜落し、菅沼は両足挫折、収三は肺臓破裂。節子が駆けつけた時には収三は既に手遅れでした。 この作品の4年前(1918年)に書かれた『三十年後』ではし…

星一『三十年後』 その7 念写文学

御船千鶴子の千里眼に続き、長尾郁子の念写が話題になったのは1910年(明治43)年。 ああいうのが商業的に実用化されたら、文筆家はさぞ楽になるのでは。『三十年後』の未来世界ではそうなってまして、時代に取り残された嶋浦翁を驚かせます。 ※ (三…

星一『三十年後』 その6 相撲の滅亡

国民の健康が平均した、大正37年の国技館では。 ※ 昔の大力士常陸山、梅ヶ谷、或は太刀山鳳、西の海、大錦、栃木山……そんな程度の大力士は素人の間にも沢山出来ましたので、相撲が一向面白く有りません。故に新聞などでも相撲の記事を書くのに今度の横綱何…

星一『三十年後』 その5 永遠の平和時代

序文を確認したところ、大正七年(1918年)四月二十七日とありました。 ソビエト政権の成立後、第一次世界大戦は継続中という混沌の時代。そんな時代にあえて星一は永遠平和論を語ります。 ※ (国内の政治・行政の人員削減ぶりを述べた後) それから陸海…

星一『三十年後』 その4 格差解決策

『日の出島』も読み終えたことだし、この勢いで『三十年後』も通読してみます。 貧富の格差が拡大し、宗教・道徳・教育・行政・経済のどれもが解決策を見いだせず、マルクス・レーニン主義のような危険思想がはびこった大正初年。そんな時代を一変させた「偉…

星一『三十年後』 その3 レーニン観

星新一のお父上の手になる、大正三十七年の未来像を描いた空想小説。 タイトルの通り、実際に書かれたのは大正七(1918)年、つまりロシア革命の翌年なのですが、その失敗を見越した箇所がありました。 ※ (三十年前の大正初年には) 人間の堕落は其極端…

村井弦斎カレー、ついにレトルト化

株式会社フリーデンやまと豚.com様の商品一覧ページより。 http://yamatobuta.com/item/retort/gensai_curry.html 「小説家 村井弦斎の大ベストセラー「食道楽」に登場するレシピを再現した、黒豆入りのレトルトカレーです」とのこと。パッケージには弦斎の…

田中義晧『世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略』(講談社選書メチエ 2007)  その2 近代日本の場合

同書最終章「日本との関係」に、近代日本における小国主義の系譜が言及されます。 岩倉使節団が大国のみならずヨーロッパの小国のあり方にも関心を持っていたこと(『特命全権大使米欧回覧実記』によるとのことですが、残念ながら未見)、大正期の三浦銕太郎…

ブウサギ

PS2用RPG『テイルズ オブ ジ アビス』に、ブタとウサギのあいのこのような動物ブウサギが出てきます。基本はブタですが耳が長く、まだら模様です。 ウサギをなでた時の質感はブタとはかなり違うと、先日私は学習したわけですが、ブウサギはどっち系なのでし…

吉田秀樹『川端康成―東京のシルエット』(龍書房 2013 予定)

予告とか予定ばっかですみません。また気になる本が出てきました。 新刊紹介の内容によると、 「大江の川端批判をめぐって」 「浅草と川端『浅草紅団』」 「〈はぐらかし〉と紐帯としての〈おみくじ〉」 「浅草ものとの決別と『出版警察報』」 などと、私の…

ジンとイフリート

日本製RPGでは別の種族として扱われることが多いジンとイフリートですが(風属性と火属性とかね)、『コーラン』の訳注によると、ジンの中でも力の強いものがイフリートなんだそうです。 本文ではなく訳注なので、イスラム教の公式見解かどうかは定かでは…

藤本勝次編『世界の名著17 コーラン』(中央公論社 1979)

『世界の小国』と一緒に図書館から借りてきた本です。 けちをつけるためではなく、異文化理解の一助になるかと思って読んでみたのですが、残念ながらでした。 全編を通読して一か所、おおいに賛同できる箇所がありました。「36 ヤー・スィーンの章」の69…

田中義晧『世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略』(講談社選書メチエ 2007)

バチカン、モナコ、アイスランドといったヨーロッパのミニ国家(この本では、人口100万人以下の国をそう定義しています)はわりと有名です。 しかし、カリブ海地域のアンティグア・バーブーダ、オセアニアのマーシャル諸島共和国、アフリカのカーボベルデ…

ぼうや描いてみた。

円と長方形と直線からなる習作機 苦情がありましたらただちに削除します。

ル・サージュ『ジル・ブラース物語』(予告?)

『日の出島』をはじめとする村井弦斎作品に大きな影響を与えたという、知られざる古典。 だいぶ前に私は神田の古本屋街で、岩波文庫の4巻本を見かけたのですが、当時は高くて手を出すのをためらってしまいました。どうせなら『日の出島』を完読してからにし…

大長編『日の出島』を三行にまとめると

太陽熱・太陽光エネルギーが実用化された「もうひとつの明治三十年代」を描く、近未来空想小説。女性の社会進出や軍隊参加など、時代を先取りした話題も多い。しかし、長期連載による発明の蓄積は現実の明治との乖離を起こしてしまい、日露戦争を前にして中…

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その12(最終回)雲岳女史の意気虹の如し

「朝日の巻」の下巻になって登場した藤原大公爵と孫の玉姫。この二人が人道同盟会の支援についたことにより、登場人物間の勢力図は一気に塗り替えられました。 悪事を尽くしてきた犬山と琴次の兄妹もついに悔悟し、雲岳女史らと共に太陽船で大陸に渡ることに…

『長谷川町子全集 第二十九巻 エプロンおばさん④ 似たもの一家』(朝日新聞社 1998)

なんぶつ先生、じんろく、ウキエのいささか一家が主人公の、『週刊朝日』1949(昭和24)年4~12月連載まんが『似たもの一家』。おカルさんに相当する夫人は出てきますが、名前は確認できませんでした。おじさんはノリスケ似の顔で、「のん助」とい…

笑顔と「かわいさ」

一般的には、無表情な顔よりは笑った顔のほうがかわいく見えるものですが。 まんが日本昔ばなしのぼうや(あの龍に乗った子供)に関する限り、笑ってない顔の方がかわいく見えるように思います。 「かわいさ」とは根本的に、自分より小さい存在に向けられる…

まんが日本昔ばなし ぼうや人形プレゼント

当ブログの下の方の広告を見て気がつきました。 別の広告には「昔ばなし太郎人形プレゼント」ともありますが、とにかくあの龍に乗った子供が、DVDの特典として製品化されています。 ただ、オリジナルに比べると、笑顔すぎるのが気になるところです。あの…

長谷川町子『似たもの一家』(予告)

伊佐坂一家が主人公のまんが。といってもスピンオフではなく、初期の『サザエさん』と同時に連載していたそうです。 欲を言えば初出(ウィキペディアによれば『週刊朝日』1949年4月10日号~同年12月15日号)で読みたいところです。

サザエさん「行列ものがたり」

待望のじん六兄貴メイン話です。病気でバイトができなくなった友人に代わって働くじん六。伊佐坂先生がめずらしく父親の顔を見せていました。 行列に割り込んだ若者(実は前の人の息子)を罵るサザエさんのセリフは、かなりマイルドに変更されていました。見…

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その11 「釣工合」

詐欺師犬山が語る釣り理論。 ※ 「魚を釣るのだつて中々呼吸が六(むづ)か敷(し)い、早く釣上げると魚が鈎(はり)にかヽらず、長く釣上げずに打捨てて置くと餌だけ只取られる、况(ま)して人間を釣るのは急ならず緩ならず程の好い釣方で無くつては不可(…

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その10 「覚悟の破船」

悪人でさえ、「覚悟」がなければ成功できないというあたりが弦斎らしいというか。 初期の「蓬莱の巻」の頃から登場していた、不良書生コンビの犬山と牛沼。 中盤からは犬山の妹の芸者琴次も加えて悪人トリオとなり、太陽燈反対運動の手先になったり、琴次に…

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その9 おまわりさんこいつです

嘘の研究を続ける幸福先生の耳に、子供を叱る母親の声が入ります。 早く家に入らないとお灸を据えるとか、言うことを聞けばカステーラを遣るとか言った末に。 「言ふ事を聞かないとお巡査(まはり)さんに連れて行かれるよ、ソラ向ふから来た」 遅塚麗水の「…

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その8 自然主義批判 から侵略主義批判へ

紹介に値する文章を探すうちに下巻に突入。『日の出島』もあと少しです。 幸福先生の、というより村井弦斎の持論、不自然主義が炸裂します。 ※ 「今の世には自然主義と云ふ謬説(びうせつ)があつて何んでも自然を尚(たうと)ぶ、怒り度(た)い時に怒るべ…

村井弦斎『日の出島』「朝日の巻」 その7 「嘘の研究」

嘘とは3ディメンジョンを有するものか、CGSの単位式で測定すべきものか。 女中のお細となった細烟女史を相手に、幸福先生の研究が始まります。 今回は改行を補って引用します。お細の発言にご注目ください。 ※ 是より後幸福先生は仲働きのお細を対手にして…

ブタ戦争 (サンフアン諸島)

こちらは1859年(日本では安政5~6年。安政の大獄の年)の、アメリカ合衆国とイギリス領北アメリカ(後のカナダ)との国境をめぐる紛争。ウィキペディアより引用。 ※ ブタを射殺したことがきっかけで発生したため「ブタ戦争」と呼ばれるようになったが…