核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

星一『三十年後』 その5 永遠の平和時代

 序文を確認したところ、大正七年(1918年)四月二十七日とありました。
 ソビエト政権の成立後、第一次世界大戦は継続中という混沌の時代。そんな時代にあえて星一は永遠平和論を語ります。

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 (国内の政治・行政の人員削減ぶりを述べた後)
 それから陸海軍も近日廃止される筈なんです。世界の人類総てが健全の思想を持つ様に成れば、戦争なんか起こしやうが有りません。既(も)う独逸のカイゼルの様な頭の狂つた人間は絶滅に近寄つて居りますので、軍備を充実させる必用(原文のまま)は有りません。現にカイゼルもあの世界の大戦の後に、未だ懲りないで大野心を起さうとして、種々陰謀を廻らしかけたのですが、星の平和薬を服してから性格が一変して、元の狼が羊に成り、軍国主義を放棄して了(しま)ひました。然(さ)ういふ風に永遠の平和時代が来てゐる訳なんです。
 (近代デジタルライブラリー 星一『三十年後』 36/138)
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 現実世界では、カイゼルことドイツ皇帝ヴィルヘルム2世がオランダに亡命したのは1918年11月10日、第一次世界大戦終結したのは翌日の11日です。
 『三十年後』での世界と日本はどうなったのか。気になるところで夢枕(録音機械)が故障し、翁は読者もろともやきもきさせられます。
 「いくら機械が発達してゐても、それが狂ふ事があるので是非も無い」。このへんのオチっぷりが星新一的です。