核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎の絶対平和主義宣言(初出より)

 前に紹介した時は改造社現代日本文学全集版(1928(昭和3)年)でした。今回は『婦人世界』1918(大正7)年5月号の初出版で。星一『三十年後』とほぼ同時期で、新聞の同じ面に広告が出てたりもする小説です。

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  「小夜子さん、復(ま)たしても妙な世界観を言出すやうですが、何卒(どうぞ)公平に僕の意見を批評して下さい、元来今の世の文明と(引用者注 全集版では「文明を」)称するものは人類の暗黒な方面が進歩したものです。飛行機が天を翔り、潜航艇が海を潜るのも、戦争といふ殺人事業が進歩した事ではありませんか。(略)然らばそれと反対に人類の光明方面から生じた産物で真に人類の誇りとすべきものは何でせう、是れは天地自然の美を発揮すべき、美術とか、文藝とか、音楽とか、人間の平和の生産物でなければなりません、然るに戦争の道具は百年前に比して幾百倍の進歩を称してゐますけれども、美術文藝音楽其他美に関した方面は百年前も同じ事です」
  村井弦斎 『小松嶋』(『婦人世界』1918年5月号掲載)
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 改造社の『現代日本文学全集 歴史・家庭小説集』とは一字だけ異同がありますが、意味内容に変化はありません。第一次世界大戦のただ中に、よくぞここまで書けたものです。