核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『誉の冑』(ほまれのかぶと 1895(明治28)年)、読了しました

 大坂冬の陣の前年、大坂城内が舞台。

 わがままな淀の方(豊臣秀頼の母)や、彼女にへつらう大野兄弟のいやがらせにも負けず、主君秀頼への忠誠を貫く勇士、木村長門守重成。九度山にこもっていた名将、真田幸村の招待にも力を尽くします。

 やがて徳川軍が攻めてくるのですが、重成は合戦にも和議交渉にも毅然と臨み、勇名を轟かせます。しかし徳川軍を恐れた淀の方一派が城の堀を埋める条件を受けいれてしまい、和議を破った徳川軍の再度の攻撃で大坂城は落城。秀頼や幸村らの脱出を見届け(そこは史実と違うところです)、重成は討ち死にします。その冑(’かぶと)には香が焚かれていたのでした……。

 

 よくある歴史ドラマのような、善玉悪玉をはっきり色分けした物語で、戦争という現象への深い洞察は見受けられませんでした。『立川文庫』よりも古い小説なので、猿飛佐助とか真田十勇士は出てきません。

 徳川家康がやったように、侵略者が偽りの和平で侵略対象に隙を作ろうとした場合、どう対応すべきかといった問題も、論じられるべきだとは思うのですが……この作品でそうした論を立てるのは無理なようです。