核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

トマス・アクィナス『神学大全』もデジコレで読める

 読めたから何だっつー気もしますが。

 ギリシア哲学のアリストテレスイスラム神学からパクった、つっこみどころだらけの「神の存在証明」に始まり、詭弁の限りをつくして、中世ヨーロッパやキリスト教会の腐敗と不平等に満ちた現状を是認し正当化する、世界ねごと全集のような代物です。

 前にも図書館でめくったことはあるし、とりあえず、第17冊(第2ー2部)の第40問題、「戦争について」だけ読み返してみました。

 聖書には一見、「剣をとる者は剣に滅びる」と、戦争を否定しているように見える文句があるけれど、それは君主に逆らう戦争、正しくない戦争に限っての話なんであって、君主の命令による戦争や、教会が正しいと認めた戦争は奨励されるんだそうです。

 「神を崇拝する者達の許では、戦争さえも平和的」という、初期キリスト教神学者アウグスティヌスのありがた~いお言葉を引用して、トマスは「正しい戦争」「平和のための戦争」を力説し美化します。

 中世ヨーロッパは現代人が思うほど暗黒の時代じゃなかった、という歴史観が最近はやっているようですが、『神学大全』を読む限りではとうてい信用できません。暗黒の時代とはお風呂に入らないとか天動説を信じてたとかいった個別の問題ではなく(それらも深刻な問題ではありますが)、神学(と称する誤謬の大系)が理性を否定している時代のことをさすのです。先の戦争美化論みたいなのが、各地の大学でもっともらしくラテン語で講義され、異議を唱える者はよくて焚書、悪くて火あぶりになる、そんな時代が暗黒でなくてなんでしょうか。

 トマスと比較するのはいくらなんでも失礼かも知れませんが、松元雅和氏の最近の仕事にも、正戦論に傾きかねない危うさを感じます。まず、絶対平和主義は宗教ことにキリスト教とは無縁な思想であること(先に引用したアウグスティヌスの戦争賛美論が、キリスト教会から批判された例などないのです)、絶対平和主義はむしろ紀元前に発する無宗教的な思想であることをしっかりと理解していただきたいものです。