素描段階とはいえ、いつか単著を出すときまでにはかたをつけねばならない問題です。博士論文では統一的な方法論を打ち出すには至らなかったので。
私が想定している平和主義文学理論とは、戦争を美化しているから×、戦争に反対しているから〇といったような、粗雑な裁断批評ではありません。第一それでは、戦争を扱っていない多数の文学作品を論じられなくなってしまいます。
戦争を扱っていない文学作品は多くとも、敵対関係をまったく扱っていない文学はまれです。敵対関係をどのように描いているか、その敵対関係を暴力的に解決するか、非暴力的に解決するとしたらいかなる方法によってか、といったあたりを分析するのが、私が思い描く平和主義文学理論の狙いどころです。扱う対象はなるべく広く。豊穣な論の展開をめざして。