核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ケン・セント・アンドレ『カザンの闘技場+デストラップ』(グループSNE 二〇一七)

かつて社会思想社から出て、日本で好評だったという、T&Tの一人用シナリオ『カザンの闘技場』と『デストラップ』の完全版対応二本立て。さらにT&Tルールブック旧版に収録されていた多人数用シナリオ「トロールストーンの洞窟」や、簡易ルールも収録さ…

名古屋市「ちくさ正文館書店本店」、この七月三十一日で閉店とのこと

かつて名古屋市千種区の住人だった私にとっても、寂しいお知らせです。 お世話になりましたというほど高価な本を購入した思い出はなく、立ち読み立ち見ばっかで、たまに文庫本を買う程度の、お店にとってはありがたくない客ではありましたが。そんな日々の思…

名もある脇役

私のシナリオ創作作法として、出てくる人物は話の中での重要度に関係なく、できるかぎり名前を設定しておく、というのがあります。ファンタジー世界なら英単語帳(仏語・独語辞典でもよし)から単語名をカタカナにして命名。意外と気づかれないものです。日…

TRPGシナリオ作成 実践編

以前、私はたいていのファンタジーTRPGに応用できる(と自負している)、ショートシナリオの作成表を作ってみました。 シナリオ作成表(前編) - 核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ (hatenablog.com) シナリオ作成表(中編) - 核兵器および通常…

フライング・バッファロー著・安田均・笠井道子ほか訳『アドベンチャー・コンペンディウム』(グループSNE 二〇一七)

冒険展覧会、とでもいうところでしょうか。グループSNEによるT&Tアドベンチャー・シリーズ1。短いソロアドベンチャー十編、多人数用シナリオ七編の短編集です。お好きな順序でといいたいところですが、ソロアドベンチャーは難易度・要求されるレベル…

G.A. ラーマン (著), K.M. オウル (著), 清松 みゆき (翻訳)『嘆きの壁を越えて』 (社会思想社 1991/2/1)

今はなき社会思想社の現代教養文庫から出ていた、T&Tソロアドベンチャー(1人用TRPG)シリーズの最後の一冊。「魔の海域」と「嘆きの壁を越えて」の二本立てです。だいぶ前に手放してしまいました。 今むしょうにやりたくてしかたがないのが、海洋冒…

嵯峨のや主人「国民大帝」(『明治文庫』第八編 一八九四(明治二七)年)

日清戦争開戦の年に刊行された(もしかしたら雑誌初出があるかもですが)、 『国 民 大 帝』。 インパクトのある題です。作者は「嵯峨のやおむろ」だったり「矢崎嵯峨のや」だったりする矢崎鎮四郎(やざきしんしろう)。坪内逍遙門下です。 しかし国民大帝…

『文明世界 宇宙之舵蔓』(一八八七(明治二〇)年)より、「第二十 空話機の発明」

ちょっと気分を変えて、明治ウチュウ系小説の紹介を。私も実は通読してなくて、原著者の名前も知らないのですが。題名は「BUNMEISEKAI WUCHU NO KAJIーZURU」と、表紙にローマ字で書いてありました。 その「第二十 空話機の発明」…

『ナチスの文学』に様々配慮した福田恒存

もう、今さら何が出てこようと驚きませんが。 高橋義孝『ナチスの文学』(一九四一)の「あとがき」より。 ※ 終りに、種々御配慮を戴いた畏友福田恒存氏に厚く感謝の意を表する。 一九四〇年十二月 著 者 (二七九頁) ※ 東京帝国大学英文科卒の福田恒存が、…

川久保剛『福田恆存ー人間は弱い』(ミネルヴァ日本評伝選 二〇一二)

今回は書名の一部なので、「「恆」存」表記で。 うかつにも今の今まで存在を知りませんでした。 これは読んでおかねばならないようです。 今さら福田の書いたものをこれ以上読む気にはなりませんが、福田について書かれたものには興味をひかれます。

『マハーバーラタ』のシカンディン

インドの二大叙事詩の一つ『マハーバーラタ』。 核通も以前完読を試みたのですが、英雄ビーシュマが力つきたあたりで当方も力つきました。 そのビーシュマの戦死に関わるのが、かつてシカンディニーという女性であった、男性英雄シカンディン。ビーシュマは…

村井弦斎について知りたいのであれば

村井弦斎についてのご質問のコメントを、昨日頂きました。 私も可能な限り、当ブログ内でお答えするつもりではあります。 しかし、弦斎という人の全体像を知りたいのであれば、まず、 黒岩比佐子『『食道楽』の人 村井弦斎』(岩波書店 二〇〇四) をお読み…

他人事のように、文学者の戦争責任追求をなかったことにする福田恒存

村井弦斎について知りたい、というコメントを頂いたこともあり、福田恒存の記事はとりあえずこれで終わりにしようと思います。 評論集『平衡感覚』(真善美社 一九四七)中の「文学者の戦争責任」。 ※ 戦争中宣伝文学に身売りした作家たちが文学から完全に脱…

宮本百合子もか

宮本百合子といえば、戦時中も獄中で非転向を貫き、戦争協力に加わらなかった良心的な人、というイメージがあるのですが。 その宮本百合子が戦後に刊行した、『歌声よおこれ』中の、「政治と作家の現実」にはこうあります。以下、青空文庫よりコピペ。 ※ ソ…

『スターリン讃歌』読めました

デジタルコレクションにありました。読めたからどうだってこともありませんが。 多少の邪念を持ってもくじを見たのですが、『暗い絵』『真空地帯』で知られる野間宏以外は、私の知ってる名前はありませんでした。 「同志よ! つきすすむ 大きなスターリンの…

日本人の手になる『スターリン讃歌』という本がある

「スターリン惨禍」の誤字ではありません。 福田恒存は参加していませんが、戦後文学者として知られる野間宏らが執筆した、『スターリン讃歌』が存在するのです。 こわいもの見たさでデジコレ検索しましたが読めませんでした。「日本の古本屋」にはあるので…

スターリンの言葉をふりかざす福田恒存

『白く塗りたる墓』(一九四八)収録の、「論理の暴力について」という文章の冒頭で、福田は出典を示さずに、「知識人は中間者であって階級ではありえない」という趣旨の引用をしています。誰の言葉かと思ったら、 ※ 今日において階級とはブルジョワジーとプ…

ポル・ポト派もびっくりの福田恒存

どうも『白く塗りたる墓』(一九四八(昭和二三)執筆時の福田は、己を共産主義に身を捧げた革命戦士と規定していたようです。あるいは、そう他者に見せたがっていたようです。 書名と同題のアフォリズム集「白く塗りたる墓」で、福田は「ヒューマニズム」を…

「ぼくはコムミュニズムを信じてゐる」と断言する福田恒存

福田恒存(今後、地の文では「恒存」表記にします)といえば根っからの保守派言論人、ウヨクの代表であって、コムミュニズム(共産主義)やサヨクとは真逆なんじゃないの?と、戦後思想にくわしい方はふしぎがるかも知れません。 実は、その大前提さえもウソ…

戦時中は「福田恒存」だった福田恆存

まさか、名前そのものがウソだったとは。福田のウソには慣れていたつもりですが、これには驚かされました。 戦後の福田恒存(引用文や書名以外はこの表記にします)は旧字旧かなにこだわり(あるいはそういうポーズをとり)、私の手元にある平成十九年刊行の…

福田恆存、けっこうデジコレで読めました

福田に限らず、戦後文学のデジタル公開はずいぶん進んでいるようです。 自称喜劇『解つてたまるか!』『億万長者夫人』もあったのですが、数ページ読んで過去に読んだ時の嫌な記憶を思い出し、クリックを中止しました。 福田恆存にライフルを持たせたような…

松本幸四郎に捧げた『明智光秀』

私は歌舞伎もくわしくないので、福田恆存の戯曲『明智光秀』の冒頭に、 「ー松本幸四郎のためにー」 とあったのを見て、 「あれ、松たか子のお兄さん?いやお父さんだっけ?」 と迷いましたが、検索したらいずれも違いました。松たか子さんのお兄さんは十代…

「早まった一般化」という詭弁

「少数の例をあげて全てを結論づける詭弁」について検索したところ、 「早まった一般化」(はやまったいっぱんか、Hasty generalization) という語が当てはまりました(早まった一般化 - Wikipedia)。 前回引用した、福田恆存の、「核兵器も冷蔵庫も科学の…

電気冷蔵庫を悪魔扱いして論破した気になる福田恆存

今回も出典に従い、つねありは恒存ではなく恆存表記で。 福田恆存「現代の悪魔」より。ラッセルらの核兵器廃絶論を嘲った末の結論。 ※ 全人類の死を招く核兵器も、小市民の生活を快適に色どる電気冷蔵庫や自家用車も、ともに自然科学の成果である。それなら…

福田恆存(ふくだ つねあり)「平和論の進め方への疑問」、デジタルコレクションで読めました

国立国会図書館のデジタルコレクションというサイトに、 『現代日本思想大系 第35』(筑摩書房 一九六三) という、戦後保守派の論を集めた本が収録されており、福田恆存(文字化けの際はご容赦ください。この本ではこの表記なので)の「平和論の進め方へ…

本日はお休み。

非生産的な一日を過ごしてしまいました。

稲垣足穂『一千一秒物語』(一九二三(大正一二)年)

私が芸術作品に求めているのは、「安心」ではなく、「不穏さ」であると前回書きました。 そうした「不穏さ」がぎゅっとつまった詩集がこれ。日本語詩を読んで感動したことがほとんどない私をも、ぐらぐらと揺さぶってくれます。まさに読むボサノヴァ。 佐藤…

とにかく暗い『灰燼』

とにかく明るい安村という芸人がいて、全裸すれすれのかっこでポーズし、 「安心してください。はいてますよ」 と決めるそうです。最近では英国で人気だとか。 森鴎外『灰燼』は、ムードこそ「とにかく暗い」のですが、芸風は安村氏に似ています。自然主義陣…

森鴎外『灰燼』、読んでみました

主人公の山口節蔵が回想する、書生時代。時は北清事変(一九〇〇年)頃。新聞や世間は北京の戦争の噂で持ちきりなのですが、節蔵は関心を示しません。もともと世間の人々を馬鹿にしているタイプなのです。「灰色の日」という気分に入った時にはそれがさらに…

『闇中政治家』の次は、『灰燼』読んでみます

『闇中政治家』は最後(あのしょぼい結末)まで読み終えたのですが、結局、先行諸論文で述べられている以上のことは書けそうにない、という結論に達しました。 『闇中政治家』という作品は、暴力革命論とジェンダー論、当時の二つのタブーに接近を試みながら…