核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

菊池寛『話の屑籠』

※ 太平洋の和戦の決定は、日本の国力、軍事力の詳細を知悉する政府当局に一任すべきであつて、我々国民としては、いかなる大戦争が起つても、それに伴う艱苦を克服するに足る質実にして耐久力ある覚悟を決めて置くべきだと思ふ。 (以下、「わが海軍の精鋭」…

倦怠感

大正平和主義にもそろそろマンネリ(というより、物足りなさ)を感じてきました。 どうも気分が重いので、やる気がもどるまで少しだけ離れます。

安部磯雄『次の時代』(1930) より 「国際平和」

日露戦争期からの平和主義者の一人、安部磯雄の国際平和論です。 「戦争が人類の進化を促進し、男性的精神を養成してきた」という戦争弁護論を批判し、その代替物としての運動競技を奨励し(このへんが安部磯雄ですね)、各国の軍隊を縮小して(英米がインド…

東亜書房編集局 編『人生百課事典:常識読本』(1936) より 「ロボツト」

1936(昭和11)年当時の、ロボットの定義。 ※ ロ ボ ツ ト 人造人間、精巧な機械組織によつて、生きた人間のやうにある仕事をさせるものです。転じて簡単な、同じ仕事ばかりしてゐる人間は「俺はロボツトだ」などと嘆じます。又黒幕に誰か居て、それに…

村井弦斎「渡宋の船」(1900)(『槍一筋』収録)

和田氏の血をひく女傑賤江を主人公に、源実朝の渡宋未遂計画を題材にした歴史小説。 北条氏の陰謀に散った兄、和田胤長(実在)の遺志を継ぎ、賤江は鎌倉に潜入して、主君実朝を北条の手から守るべく暗躍します。 そこに訪れたのが宋国の僧侶、陳和卿。とは…

村井弦斎『槍一筋』(1900)

「コレ菊姫、何故あつて此店の品物は一つも売れぬのであらう」 明治初年、士族の商法を題材とした中編です。 題名通りの槍一筋、三千石の旗本とその姫君が骨董屋を開くものの、羽織ばかまで客どもをどなりつけるような接客ぶりでさっぱり売れず、商人の息子…

村井弦斎『小松嶋』(『小松島』)における日露戦争

結末近くの軍備廃絶論だけ先に紹介してしまいましたが、半ばの日露戦争編では結構温度差があります。 ※ 二月の初めといふに日露の平和が破れて、大佐(引用者注 ヒロイン小夜子の義父)は直ちに朝鮮方面へ出征する事となつた。 (略。大佐から少将に昇進した…

川島清治郎『空中国防』 より 「恐るべき無人飛行機」(1928)

1928(昭和3)年に日本のドローン技術を警告した説。 ※ (ドイツの無人戦争飛行機による爆撃を、フランス側が危惧しているという記事の後) また米国の例のミツチエル大佐が(略)排日思想を扇動する中に『次の戦争には某国の無人飛行機が下カリフオル…

上杉慎吉『日米衝突の必至と国民の覚悟』(1924)

タイトルの通り、邪悪な米国の世界支配を日本の手で打倒しよう、物量では劣っても精神的には必ず勝つ、といった内容の本なのですが、その中に、 「永久平和の名の何ぞ偉大なる之を出現するの日本の使命の何ぞ崇高雄偉なる、日米戦争は永久平和の日出である」…

『太閤記』中の「平和」「永久」?

近代デジタルライブラリーで「永久」「平和」を検索すると、けっこうな数の文献が出てきます。 1910~20年代が圧倒的に多いのですが、中に『太閤記』が。 太閤記に平和主義者なんていたっけ?と思ったら 目次:一四九 中川瀬「平和」田伊賀守を討つ ​ …

板垣退助『一代華族論』(社会政策社 1912)での平和主義

昨日、1919年刊と紹介してしまいました『一代華族論』ですが、1912(明治45)年版があったことを発見しました。『社会政策』誌に掲載されたものの単行本化だそうです。 全文を比較したわけではありませんが、わが国は「徳義人道に基づく所の平和主…

板垣退助『一代華族論』(1919)より 「人種平等世界平和の大理想」

近代デジタルライブラリーで平和主義関連を検索してみると、有名無名の平和主義者がぞろぞろ出てきます。特に第一次大戦後の時期は。今回は有名人の方を。 板垣退助というと、「板垣死すとも自由は死せず」の名文句と共に暗殺された、と思ってる方が意外と多…

尾崎行雄『軍備制限』より 「武装的平和主義の破産」(1929)

防火のために消防署を増やしたからといって、そのために火事が増えることはありません。 しかし、「平和のために軍備を増やす」のは、それ自体が周辺諸国への脅威となり、緊張を高める危険性を秘めているわけです。そのあたりを指摘したのがこの尾崎論。 ※ …

大正平和主義の問題点

まだ早計かも知れませんが、「どうやって?」が欠けているように思います。明治の平和主義と比べてさえも。

尾崎行雄『永遠の平和』(1919(大正8)年)

少々看板倒れでして、平和論と直接関係のない話が大半を占めています。 第一次大戦後の趨勢についても(執筆時は大戦続行中だったようです)、戦後に必ずしも永遠の平和が来る、という楽観主義ではありません。 ただ、大戦前のような「武装的平和」の時代に…

大正平和主義

ぐぐっても出てこない言葉ですが、「大正平和主義」と呼ぶに値する実態は存在しました。 ※ 飛行機が天を翔り、潜航艇が海を潜るのも、戦争といふ殺人事業が進歩した事ではありませんか。(略)然らばそれと反対に人類の光明方面から生じた産物で真に人類の誇…

なすチャーハン

1 なすとキャベツとハムを炒める。 2 たまごを入れて混ぜる。 3 ごはん投入。半ばカリっとするまで炒める 料理というのもおこがましい代物ですが、けっこううまくいきました。ハムがベーコンの味になってました。

増田義一「村井弦斎君の長逝を悼む」(『婦人世界』1927年9月号)

実業之日本社の創始者による、村井弦斎への追悼文です。 ほぼ同じ時期に芥川龍之介の自殺事件がありまして、そちら関係の追悼文に比べればはるかに小さい扱いですが、晩年の弦斎のひととなりを知る貴重な資料です。 ※ (弦斎が『婦人世界』に)小説『子宝』…

賀川豊彦『世界平和論―帝国主義は人文史の一階級』(1906)

『徳島毎日新聞』1906(明治39)年8月16日~24日初出。『賀川豊彦全集』第10巻収録。 「見よ、世界の人類兵器を破壊して一平原に集りて人道を賛美するの時は近づけり」 という一章末尾の名文句が期待をかきたてます。こういう名前のブログやっ…

河島幸夫『賀川豊彦と太平洋戦争』(中川書店 1991)

後に『日本キリスト教史における賀川豊彦―その思想と実践』(新教出版社 2011)収録。 十八歳にして『世界平和論』を発表し、平和主義者として半生を歩んできた賀川豊彦の、太平洋戦争期に転向に至った記録です。 一九四三(昭和一八)年一一月三〇日、…

賀川豊彦『戦争は防止し得るか?』(1935)

国際間貿易・相互依存の発達により、経済的に戦争は防止し得るという趣旨。 明治末期の矢野龍渓も同じような説でしたが、昭和10年という時期に貿易のみによって日支親善が成るかのような議論は、楽観的にすぎると思うのです。 後の太平洋戦争という現実に…

賀川豊彦の対米非戦論(『産業組合の本質とその進路』(1940)より)

1940(昭和15)年に、日米を含む民族間の闘争を「誠につまらぬこと」と断言した章です。理想主義者というべきか、現状認識不足というべきか。 ※ 飛行機文明の発達は恐らく世界の封建的組織を破壊せずには置かないであらう。飛行機の力をかりれば、日本…

長山靖生『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』での『空中征服』評

※ 賀川豊彦『空中征服』(改造社 大正十一)もまた、この時期を代表する重要な未来小説だ。 (略。あらすじ紹介の後) 『空中征服』で賀川が取り上げた公害や階級格差といった社会問題は、実際に彼が取り組んでいたものだった。キリスト教徒であった彼は、社…

中山孝一『日本憲法改正論』(1930) その2

大日本帝国憲法の改正を訴える中山著から、前回引用し落とした箇所をいくつか。 「(政党政治遂行の障碍は)曰く枢密院、曰く陸海軍、曰く貴族院等である」 「無理は無制限より生る 君主の権力は憲法に依て制限せられ、衆議院議員の権能は解散に依て制限せら…

中山孝一『日本憲法改正論』(1930)

憲法記念日にちなんだ古書紹介を。といっても、新鮮味のある日本国憲法論議はできそうもないので。 「大日本帝国憲法の改正」を提唱した戦前の人はいないものか、と探したら見つかりました。 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1437002 1930(昭和…

逆神降臨

私がまったく評価していないある批評家が、賀川豊彦を「ばか」と書いているのを読んで、ちょっとだけ元気と自信がでてきました。あの人の書くことなら、間違ってると期待してよさそうです。

横田順彌『百年前の二十世紀』の『空中征服』評

※ (公害のSF的予測の)中でも、大正十一年の賀川豊彦のSF的風刺小説『空中征服』は、真正面から、当時「煙の都」と称された大阪の煤煙問題に取り組んでいる。 (略。あらすじ紹介の後) 特異な思想を持った風刺SFだが、最初から最後まで煤煙公害問題…