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賀川豊彦『空中征服』(改造社 大正十一)もまた、この時期を代表する重要な未来小説だ。
(略。あらすじ紹介の後)
『空中征服』で賀川が取り上げた公害や階級格差といった社会問題は、実際に彼が取り組んでいたものだった。キリスト教徒であった彼は、社会主義者とはいいながら、革命や労働者の実力行使といった暴力的手法は避けつつも、貧民には住むべき場所がない現状を痛烈に批判した。体重をゼロにしなければ行き場がない人間というのは、つまり生きながら死んでいるということであり、ユーモラスでありながら切ない。
(長山靖生『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』河出書房新社 2009 134~136ページ)
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続く文章では星一と賀川豊彦の共通項として、「ユーモアの顕在化」を挙げてもいます。