核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

賀川豊彦『空中征服』

『社会文学』第47号(2018)に

菅原健史「賀川豊彦『空中征服』論―代替エネルギーと実現手段の探究―」が掲載されました。

読み直しと書き直し

「非暴力」にとらわれずに読むと(といっても、最終的には非暴力論に落ち着くわけですが)、以前は読み込めずにいた箇所が、そこにある必然性を持って読めてきます。エコフェミニズムにまで深入りするつもりはありませんが、そのへんも勉強はしておく必要は…

一仕事終えたところで。

また『空中征服』論に戻ろうかと思います。『ある青年の夢』とは当分お別れで。

代替エネルギー。

長らく放置していた『空中征服』論ですが、新たな切り口らしきものが見つかり、執筆を再開する気になってきました。仕事も一段落したことだし。

『空中征服』論、不採用でした。

まさに完敗でした。また一から論を建て直します。

ひとまず脱稿

約一年かかりました。それに見合った出来かどうか。

「交差点 満州事変の首謀者石原莞爾と賀川豊彦の接点」 

交差点 満州事変の首謀者石原莞爾と賀川豊彦の接点 井村 勇 共済と保険 47(12), 8-10, 2005-12 賀川豊彦と満州で検索したら、以上のごとき気になる題の論文がヒットしました。 いかなる接点でしょうか。 (2017・3・20追記 読んだところ、直接的な接…

空中征服論やや進捗

まだ完成には遠いですが、心覚えとして書いておきます。 非暴力的抵抗に内在する暴力性とか、そのへんのことを考えています。

賀川豊彦『世界平和論―帝国主義は人文史の一階級』(1906)

『徳島毎日新聞』1906(明治39)年8月16日~24日初出。『賀川豊彦全集』第10巻収録。 「見よ、世界の人類兵器を破壊して一平原に集りて人道を賛美するの時は近づけり」 という一章末尾の名文句が期待をかきたてます。こういう名前のブログやっ…

河島幸夫『賀川豊彦と太平洋戦争』(中川書店 1991)

後に『日本キリスト教史における賀川豊彦―その思想と実践』(新教出版社 2011)収録。 十八歳にして『世界平和論』を発表し、平和主義者として半生を歩んできた賀川豊彦の、太平洋戦争期に転向に至った記録です。 一九四三(昭和一八)年一一月三〇日、…

賀川豊彦『戦争は防止し得るか?』(1935)

国際間貿易・相互依存の発達により、経済的に戦争は防止し得るという趣旨。 明治末期の矢野龍渓も同じような説でしたが、昭和10年という時期に貿易のみによって日支親善が成るかのような議論は、楽観的にすぎると思うのです。 後の太平洋戦争という現実に…

賀川豊彦の対米非戦論(『産業組合の本質とその進路』(1940)より)

1940(昭和15)年に、日米を含む民族間の闘争を「誠につまらぬこと」と断言した章です。理想主義者というべきか、現状認識不足というべきか。 ※ 飛行機文明の発達は恐らく世界の封建的組織を破壊せずには置かないであらう。飛行機の力をかりれば、日本…

長山靖生『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』での『空中征服』評

※ 賀川豊彦『空中征服』(改造社 大正十一)もまた、この時期を代表する重要な未来小説だ。 (略。あらすじ紹介の後) 『空中征服』で賀川が取り上げた公害や階級格差といった社会問題は、実際に彼が取り組んでいたものだった。キリスト教徒であった彼は、社…

横田順彌『百年前の二十世紀』の『空中征服』評

※ (公害のSF的予測の)中でも、大正十一年の賀川豊彦のSF的風刺小説『空中征服』は、真正面から、当時「煙の都」と称された大阪の煤煙問題に取り組んでいる。 (略。あらすじ紹介の後) 特異な思想を持った風刺SFだが、最初から最後まで煤煙公害問題…

Ciniiで「空中征服」を検索したら

Ciniiで今月号の雑誌が出るというのも珍しい話です。幸先よさそうです。 ※ 近代日本奇想小説史 大正・昭和篇(第20回)空中征服から豪華連作小説まで 横田 順彌 SFマガジン 56(3), 316-329, 2015-04 日本大衆文学のSF的展開--賀川豊彦「空中征服」の一考察 (大…

渡辺 弘「大阪市に於ける大気汚染の実態」

『生活衛生』 1(1), 24-29, 1957。Ciniiにて閲覧可能。 こういう論文が欲しかった!と思いきや、グラフに載っているのは昭和3年以降でした。 「大正時代の大阪市における大気汚染の実態」なんて都合のいいデータは、そう簡単には見つからないようです。

賀川豊彦『空中征服』 より 水力発電

煙害撲滅をめざす賀川市長への、当然といえば当然の反論。 ※ 「おい、賀川、貴様は大阪市の煙筒から煙が少しも出ないようにすると言うじゃないか、いったいそんなことが出来ることか、出来ないことか、やってみるがよい! 煙が出なければどうして機械を回す…

賀川豊彦「星より星への通路」(1921)

『空中征服』中の光線列車の原型ともいうべき散文詩を見つけました。単行本『星より星への通路』(1922)巻頭収録です。 監獄に囚われた主人公が、瞑想の内に地球を超え、木星・火星・ヘラクルス星座等の旅に出るという展開です。バローズの火星シリーズ…

賀川豊彦『空中征服』より 蟹の無傷害主義

人間社会に倦み、川底の自然世界に隠遁した賀川豊彦市長。しかしそこも、党派や闘争と無縁の地ではありませんでした。鋏と甲羅で武装した恐ろし気な蟹から、意外にも聞かされる軍備縮小論。 ※ 蟹は涙を流して、自己の不運を嘆いた。蟹の虜となりながら、蟹の…

賀川豊彦『空中征服』より 光線列車

今までマルクス批判の箇所ばかり引用してしまいましたが、やぼな話ばかりではなく、想像力の飛躍に満ちた場面も『空中征服』には多々あります。その一か所、火星への移住場面を。 ※ 霊の賀川市長はすべての人々に布告した。 「空中村の人々はすべて即刻火星…

賀川豊彦『空中征服』を三行で要約すると

大阪市の市長に就任した「賀川豊彦」氏は、大気汚染の問題を電力化等の政策で解決しようと試みるがことごとく失敗する。新発明の気体力学による空中住宅・空中田園への移住計画はうまく行きかけたが、軍による空中村砲撃によってまたも失敗する。「魂の(あ…

社会主義ーソビエト権力=?

レーニンは「共産主義とは、ソビエト権力プラス全土の電化である」という言を残しています。 そういう式でいうと、「『空中征服』のテーマは、社会主義マイナスソビエト権力である」と、とりあえずは言えるでしょう。 ただ、オール電化(死語だな)の未来を…

『空中征服』中のマルクス主義への疑問

「マルクスを尊ばず」の一例として。 ※ 何かもう少し強い真理の世界に掘り下げねばならぬと、彼は考えた。 すべての社会運動は果して何の上に立っているか? マルクス社会主義者は「唯物的生産の上に」と言うであろう。しかし、その物質的生産は何のためであ…

「空中征服」中の、太閤と大塩のレニン(レーニン)評

賀川豊彦の空想小説『空中征服』の一場面で、大気汚染に苦しむ大阪を救うため復活した太閤と大塩平八郎。幕府への反逆者だった大塩が「ようレニン!」と冷やかされるのはまだわかりますが、意外にも太閤も、レニンの電化政策には好意的です。青空文庫より。 …

賀川豊彦「空中征服」の結末中の一節

1922(大正11)年。つまり軍備縮小同志会での活動と同時期に書かれた、星一の『三十年後』にも似た未来空想SFです。 その結末、私設裁判で処刑されつつある賀川豊彦(主人公)に、魂の賀川豊彦が述べる弔辞。 ※ マルクスを尊ばず、レニンを敬せず、…

姜 克實「尾崎行雄と軍備縮小同志会」

『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』第38号(2014.11)。ネット上で入手できました。 1922年以降の尾崎行雄ら軍備縮小同志会の演説内容とその影響が詳細にまとめられています。 賀川豊彦ら文学者・絶対平和主義者との差異も、かなり明らかになった…

与謝野晶子『人間礼拝』(1921)より 「尾崎行雄氏の軍備縮小論」

文学者の側からの、軍備縮小論が見つかりました。知ってる方には常識だったかもしれませんが、与謝野晶子の感想集『人間礼拝』より。 尾崎行雄の軍縮案は、衆議院内では島田三郎以下三十数人の支持を得たのみだが、その背後には選挙権を持たない大多数男子と…

軍備縮小同志会『軍備縮小講演集 第1輯』(1922) より 尾崎行雄「華盛頓会議と軍備制限」

ワシントン会議を背景とする、世界的な軍備縮小の空気の紹介。国際世論の要求と国家予算の限界の両面から、軍費制限の必要性を論じています。賀川豊彦と違い、こちらは軍備撤廃にまでは踏み込んでいません。 もう一つの論点は、空中軍をはじめとする新式兵器…

軍備縮小同志会『軍備縮小講演集 第1輯』(1922) より 賀川豊彦「軍備の撤廃せらるまで」

また少し、軍備廃絶論の話に戻ります。賀川豊彦と尾崎行雄による、軍備縮小を訴える講演集です。 今回は賀川の「軍備の撤廃せらるまで」を紹介します。のっけから縮小ではなく撤廃。とばしてます。 大正11年という時代背景もあり、第一次世界大戦の惨禍、…