核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

#その他人文科学

シャンタル・ムフ『政治的なものについて 闘技的民主主義と多元主義的グローバル秩序』(購入予定)

副題の「多元主義的グローバル秩序」のあたりに惹かれました。要熟読です。 正直、ラクラウとムフの共著を読んで、少しムフ熱が冷めつつありますが。 夫婦漫才じゃあるまいし、ラクラウ=ムフなんてユニット名自体どうなのかと。 エルネスト・ラクラウについ…

本橋哲也『ポストコロニアリズム』(岩波新書 二〇〇五)

ポストコロニアリズム(字義通りには植民地主義以降)を、「植民地主義による支配の構図を反省し、反転し、反抗する」(序より)思想としてとらえる入門書。 その大義には異論はないのですが、問題は実現手段です。たとえば、フランツ・ファノンの、植民地…

ツヴェタン・トドロフ『民主主義の内なる敵』(予告)

構造主義者としてしか知らなかったあのトドロフが、21世紀の民主主義について論じた書物があると知りました。 日本の福島原発災害にも言及しているようです。 『批評の批評』と合わせて、次回はトドロフ祭りになりそうです。ムフに不満なわけではありませ…

三浦俊彦「デリダのパラドクス」(『論理サバイバル』二見書房 二〇〇三)より

同書一二七~一二八ページ。「真面目と不真面目の区別などは存在しない、あるのは差異の戯れのみ」と語ってきたデリダが、自分への批判に対してだけは「真面目に」相手の「不誠実」を慨嘆している、というパラドクスを扱ったものです。 三浦氏はそれへの答え…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その3

最初に読んだ時は「所詮マルクスではないか」と思ったものですが、再読して印象が変わりました。 「所詮毛沢東ではないか」に。ネグリ&ハートは手を取り合って喜ぶかも知れませんが、ほめてません。 ※ 革命闘争の間、そして大躍進や文化大革命の時期にはさ…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その2

いかにしてマルチチュードは〈帝国〉に抵抗するか。具体例の一つとして、著者たちは「キス・イン」を挙げています。 ※ 今日必要なのは、民主主義のための新しい武器を発明することである。実際、新しい武器を見つけるための創造的な試みは数多くなされている…

ネグリ&ハート『マルチチュード(上)』『マルチチュード(下)』NHKブックス 二〇〇五 その1

幾島幸子訳。水嶋一憲・市田良彦監修。副題「〈帝国〉時代の戦争と民主主義」。 RMA(軍事革命)とか勉強になる箇所もありましたが、結論には同意できませんでした。 ※ 近代を通じて、そして今日もなお抵抗運動は、戦争とそれがもたらす暴力に立ち向かう…

ネグリ&ハートなど読んでみる

ムフに批判されている側の言い分も聞こうと思い、『マルチチュード』上下巻なんてものを借りてきました。 日本語版で二〇〇五年刊。今まで読んでなかったのかという批判は甘んじて受けます。ムフより知名度ははるかに上なのに。 で、一回通読してみた感想で…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その3

平和主義でさえ、友敵概念の例外ではないというシュミットの批判。 ※ いかなるものもこのような政治の帰結(引用者注 友敵の分裂)を避けることができない。戦争に対する平和主義者の反対が平和主義者をして非平和主義者に対する戦いに追いやるほど、つまり…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その2

核兵器および通常兵器の廃絶をめざす平和主義者こそ、まじめにシュミットを読むべきだと私は思うのです。ナチスの理論家シュミットが平和主義者であるからではもちろんなく、平和主義への徹底した反対者だからであり、そうした人との対話こそ平和主義を鍛え…

カール・シュミット『政治的なものの概念』(一九三二) その1

引用は『カール・シュミット著作集1』(慈学社出版 二〇〇七)より。 ※ 敵はhostis πολεμιος(ポレエミオス)であって、広義のinimicus εχθρος(エクトロス)ではない。ドイツ語は他国語と同様「私敵」と政治上の「敵」を区別しない。そこから多くの誤解や…

ムフから見たランシエール

昨日は休んでしまいました。ムフ祭りを開催したのはよかったのですが、旅の疲れがどっと出まして。 ランシエールとの合意点について、ムフは以下のように述べています。 ※ いまや支配的な、合意を至上とする政治は、たとえいろいろな場所でいやというほど聞…

シャンタル・ムフ『民主主義の逆説』(以文社 二〇〇六)

「アレント、ムフ、ランシエール」という副題の論文が見つかり、にわかにやる気が出ております。理論苦手の私ですが、今回の『経国美談』論ではそのあたりを避けて通れないので。 で、シャンタル・ムフの民主主義観のあらましを。『民主主義の逆説』第4章「…

渡辺 弘「大阪市に於ける大気汚染の実態」

『生活衛生』 1(1), 24-29, 1957。Ciniiにて閲覧可能。 こういう論文が欲しかった!と思いきや、グラフに載っているのは昭和3年以降でした。 「大正時代の大阪市における大気汚染の実態」なんて都合のいいデータは、そう簡単には見つからないようです。

星一『官吏学』概観

ものすごい情報量の労作だし、当時の雑誌論文の水準をはるかに上回っていますけれど、ただ。 『官吏学』である必然性があったのでしょうか。特に三巻以降。

星一『官吏学 第四巻』 より 「うき事のなほ此上につもれかし」

もしかすると『三十年後』より面白いような気がする『官吏学』。特にこの四巻は『官吏学』という主題を離れ、かなり自由奔放に持論を語っています。 「うき事のなほ此上につもれかし限りある身の力試さん」 という歌を、少なくとも十数年前から座右の銘にし…

星一『官吏学 第三巻』における国防論

国民皆兵主義と軍縮論という、かなり独特の組み合わせです。 欧州の大戦(第一次世界大戦)とは国力総体の対抗であり、軍国主義ドイツの敗因は軍備への偏重にあった、という分析のもとに、星一は以下の結論に達します。 ※ 故に余の意見は戦術其他特殊の研究…

星一『官吏学 第三巻』におけるW・ジェイムズの「道徳的代用価」と戦争中止論

1922(大正11)年刊行の、星一畢生の大著です。 当ブログがたびたび引用してきました、ウィリアム・ジェイムズの「戦争の道徳的等価物」論を、星一も引いていました。「軍備」の章より。 ※ ウイリアム・ジエームスは之に或る「道徳的代用価」を置き換へ…

大原則。

一般常識に反する説を発表する際には、まず提唱する側が具体的なデータを示す必要がある。これは学問の大原則です。 たとえば、「明治時代には民主主義や平和主義などなかった」という常識(むしろ俗説)は根強く広まっていまして。私の論文は引用文が多すぎ…

吉本隆明からは何も学びませんでした。

「多分貴方は吉本隆明ファンではないかと思いますので」というコメントを頂いて、正直面喰っております。 当ブログが吉本に言及したのは、開設2日目の2011年2月26日(http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/archive/2011/02/26)に、いささか不謹慎…

田中義晧『世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略』(講談社選書メチエ 2007)

バチカン、モナコ、アイスランドといったヨーロッパのミニ国家(この本では、人口100万人以下の国をそう定義しています)はわりと有名です。 しかし、カリブ海地域のアンティグア・バーブーダ、オセアニアのマーシャル諸島共和国、アフリカのカーボベルデ…

日本社会文学会・シンポジウム「戦争と文学を考える――「戦争×文学」(集英社)を読む」

シンポジウム情報。行けるかわかりませんが一応貼ります。 ※ 日本社会文学会・ シンポジウム「戦争と文学を考える――「戦争×文学」(集英社)を読む」(2014年3月8日(土)、共立女子大学神田一ツ橋キャンパス本館) 学会情報です。 ------------------------…

前向きなメランコリー、もしくは「こわ悲しい」嗜好

なんというか、いま現在のような沈滞状態にあると、つい「怖い画像」とか「検索してはいけない言葉」だのを探してむなしく時間をつぶす悪癖がありまして。 そういうコンテンツに一定の需要があるということは、私と同じ嗜好の方も珍しくはないのでしょう。さ…

三浦俊彦『心理パラドクス』(予告)

最近この本が面白くて仕方がないのですが、仕事(?)やりかけにつき、終わってから本格的に読み返すことにします。三浦氏にはいつか、『倫理パラドクス』も書いて欲しいものです。

5五将棋(コンピュータ将棋協会監修 『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』 技術評論社 2012)

複数ソフトの多数決合議方式を実験するために、5五将棋という簡易ルールが紹介されていました。 紙で仕切りをすれば、ふつうの将棋盤でもできそうです。 一 二 三 四 五 1 飛 角 銀 金 玉 2 歩 3 4 歩 5 玉 金 銀 角 飛 ルールは普通の将棋と同じ。成…

コンピュータ将棋協会監修 『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』 技術評論社 2012

もはや清水市代女流王将や故米長邦雄永世棋聖のごとき一流プロでさえ、コンピュータに勝てなくなり、むしろ「コンピュータ将棋の弱点を探る」(第十章章題)方が重要な問題になりつつあります。もう専門的な話題にはついていけそうもないので、歴史的な経過…

フロイト 「戦争と死についての時評」(初出1915 『フロイト全集14』岩波書店 2010)

田村公江訳。 第一次世界大戦のさなかに書かれたにも関わらず、非常に冷静な文章です。しかし、例によってフロイトの意見には納得できません。 近代人は死を自分とは無縁に思ってきたが、戦争という現実はそれを変えつつある、という分析の後、フロイトはこ…

フロイト 「喪とメランコリー」(初出1917 『フロイト全集14』 岩波書店 2010)

伊藤正博訳。 私はフロイトを読んで納得できたことが一度もないのですが、今回もそうでした。 だいたい、フロイトのメランコリー観は次の一節に集約されるようです。メランコリー患者の自己非難は、本来の対象から離れて患者本人へと転換されたものだと。 ※ …

田中ひろし 『版画式 点字 基礎のキソ てんてんてんてんてんてん』今人舎 1998

長い副題の通り、6つの「てん」からなる50音の点字を、わかりやすく解説した本です。 サイコロをたて長にしたような図形で、左上に一つの点で「あ」。横2縦3の6つの点で「め」。これなら覚えられそうです。 つねづね私は、義務教育では文学なんかより…

明治新聞雑誌文庫

最近、国会図書館で「デジタル化中のため閲覧不可」な文献がむやみと増えまして。釣り場を変えてみようかと思います。 http://www.j.u-tokyo.ac.jp/lib/meiji/index.html 東京大学大学院法学部。とはいえ気おくれしてはいられません。万一博士号げとしたとこ…