田村公江訳。
近代人は死を自分とは無縁に思ってきたが、戦争という現実はそれを変えつつある、という分析の後、フロイトはこう結論します。
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しかし戦争が廃止されることはないだろう。諸民族の生存条件がこれほどまでに多様であり、諸民族の間の反発がこれほどまでに激しいものである限り、戦争は存在せざるを得ないだろう。そこで次のような疑問が生ずる。われわれは、膝を屈して戦争に適応するような存在であってはならないのか。われわれは、認めるべきではないだろうか。死に対する文明的な考え方によって、われわれは、心理学的にはむしろ分不相応に生きてきたのだ、と。おそらくわれわれは、改心して、真実を告白すべきなのだ。
(165ページ)
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戦争は廃止できない。だから「改心」して戦争に「適応」しろ。それがフロイトの戦争観です。
この文章だけではありません。症例「狼男」で有名な「ある幼児期神経症の病歴より」でも、強迫神経症者が軍隊の制服や武器や馬に熱中し始めたことを「よりよく昇華されることになった」と述べています(同全集72ページ)。病んでいるのはどちらでしょうか。狼の悪夢におびえてるほうがよっぽど健全です。